アート作品はすぐに値上がりはしない
アートの取引は不動産取引に似ている
投資目的でアートを購入する場合、少し注意していただきたいことがあります。それは株や債券とは違い、アートには即金性がないということです。アートを売るには、少なくとも数年、ときには数十年を要することもあります。
それに高額の美術作品は、保管にもお金がかかります。倉庫代に保険料、移送費も必要です。また画商やオークションハウスに支払う手数料も決して安いものではありません。オークションで売買する場合も、落札価格の10パーセントから15パーセントの手数料が必要になります。
その手数料分を上回る値上がりは、短期間には期待できません。そうした意味では、アートの取引は、株よりも、むしろ不動産に似ているのかもしれません。
このようなアートとお金にまつわる話は、2019年夏に公開の映画『アートのお値段』にくわしく表現されていますので、興味をお持ちの方は是非ご覧ください。
『マイ・アーキテクト ルイス・カーンを探して』でアカデミー賞にノミネートされたナサニエル・カーン監督が、誰もが抱く「アートとお金」に関する疑問を美術界の有力者たちにダイレクトに投げかけながら、アートとお金の関係を探るドキュメンタリー映画です。
ギャラリスト、コレクター、評論家などが登場するほか、ドイツ人画家のゲルハルト・リヒターといった大物アーティストたちも出演していますし、オークションハウス「サザビーズ」で作品が売買される様子なども映し出され、とてもリアルにアート市場の裏側が描かれています。
アート投資法
「自分もアートに投資したい」と思った場合、おすすめの方法をご紹介します。気に入った作品を選び、そのまま、ずっとオフィスや自宅にその絵を飾っておくのです。そうすれば日々、その作品を楽しむことができるだけでなく、アーティストが認められた暁には、価値がどんどん上がっていきます。
美術品は値上がりも期待できますが、それを目的に集め始めると、往々にして期待を裏切られるものです。上がるものは上がるが、値がつかないものは本当にゼロになる。そうしたことも十分にあり得るのです。
どんなに目利きの画商でも10年後、20年後に必ず値上がりするアーティストを100パーセント見出すことはできません。不確実な情報に振り回されて好きでもない作品にお金を払うより、本当に自分の好きな作品を買うほうが後悔は少ないでしょう。