「納得のいく理由」こそが組織を団結させる
「理由」の説明が組織の一体感を生む
コンサルティング業務の立ち上げにせよ、新ツールの導入にせよ、新しいことへの取り組みは物理的にも精神的にも一定の負荷を伴います。気が進まないことを指示されれば、だれもが反射的に「なぜやらなければならないのか?」と疑問と反発を持つものです。
なかなか指示に従おうとしなかったり、従うにしても複雑な感情を抱えたままになったりします。一方で、納得のいく理由を説明されれば反発的な感情も消え、積極的に取り組めるようになります。
それだけ「理由」は人の感情と行動に大きく影響を与える力を持ちます。理由の力については、拙著(『リーダーのための経営心理学』日本経済新聞出版社)を参考にしていただければと思いますが、指示の際に理由を説明する人と、説明のない人とでは、指示を受ける側の感情と行動に大きな差が生まれるのです。
ただ、「別にいわなくてもわかるだろう」「そこまで説明する必要はないだろう」と理由を話さない上司や経営者は少なくありません。これまで私が関わった会社でも「いちいち理由までいわなくてもわかるだろう」という指示側と、「説明をしてくれないとわからない」「何となくわかるけれど、きちんと説明してもらえば納得して取り組める」という指示を受ける側の気持ちのミスマッチは多く見受けられました。
理由の説明は、今後の方向性を共有して経営者と従業員の意識を揃え、新たなアクションを二人三脚で起こすためにも不可欠なことだといえます。従業員全員に伝えるのが難しければ、せめてマネージャーや幹部クラスだけでも伝える必要があります。変化に素早く対応するための機動性は組織の一体感から生まれ、その一体感は理由の説明によって全員が納得して同じ方向に意識を向けることから始まります。
リーダーがぶれずに発信し続ける
組織に新たな変化をもたらすためには、リーダーがぶれずに取り組む姿勢を見せ、継続的にメッセージを発信し続けることが必要です。
業務の効率化を目的として新ツールを導入するにしても、リーダー自身があきらめればその動きは途絶えます。新たな取り組みは、部下に「面倒くさい」という負の感情を芽生えさせ、なるべくやらずに済ましたい心理をもたらします。その際に部下が意識を向けるのが、「リーダーの本気度」です。リーダーが本気だと感じれば、多少のストレスがあっても部下は取り組みますが、リーダーの本気を感じなければ部下は従いません。