元気な高齢者がコロナのワクチン接種の予約が取れないのに、認知症の父親が取れるわけがない。仕事をしながらでは予約競争には勝つことはできず、絶望的な日々を過ごすが…。在宅で認知症父を介護する著者が経験したワクチン接種の予約騒動の舞台裏を明らかにする。連載「見つめてひらめく介護のかたち『楽しむ介護』実践日誌」の著者の黒川玲子さんが認知症の父を在宅で介護する日々を現場報告する連載特別編をお届けします。

パソコンと鬼電…高齢者にワクチン予約は無理

65歳以上の高齢者への新型コロナウイルスワクチン接種が始まり、ニュースやワイドショーでもほぼ毎日取り上げられている。「スマホを持っていないから」「予約の仕方が良くわからない」などと、インタビューに答えている高齢者を見ると、一人で歩ける元気な高齢者だってわからないことが多くて大変なのだから、要介護者が一人でできる訳がない。

 

わが家にも在宅で介護しているじーじに5月の初旬に接種券が届いた。まずは、予約日を確認するべく「ご案内書」を何度も確認したが、どこにも予約開始日の記載がされてないのである!

 

「事前予約」と黒枠で囲まれ多少大き目に記載をしてある横には、「コロナワクチン接種は、事前予約制となります。詳細は〇ページの予約方法をご覧ください」の一文。指示通りにページをめくると、Web予約サイトのURLとQRコード、問い合わせ先の電話番号があるだけだ。

 

要介護の高齢者にはもやワクチン接種の予約は無理な現実が…。(※写真はイメージです/PIXTA)
要介護の高齢者にはもやワクチン接種の予約は無理な現実が…。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

予約開始日を知るだけでも、ホームページにアクセスするか、役所に電話をして確認しなければならない。おまけに、実施場所の医療機関や集団接種会場もホームページを見ろという。まあ、さまざまな事情があるのかもしれないが、せめて予約開始日は記載して欲しいものである。なんとも不親切な「ご案内」なのである。

 

予約当日は、運悪く? 講義の日。10分の休み時間と50分の昼休みに必死にアクセスするも「ただいまWebサイトへのアクセスが大変混みあっております」の文字がむなしく表示されるだけだった。初日は断念、次の日も時間を見つけてアクセスするもつながらない。

 

友人に「おかあさんのワクチン予約できた?」と聞いたところ、有給を使って会社を休み、予約受付開始数分前からパソコンに張り付きアクセスしながら、鬼電(何度も何度も電話すること)のダブル戦法で予約を取ったそうだ。そんなことをしなければ予約ができないなんて、仕事の合間にチマチマやっていたのでは無理に決まっている。

 

じーじの通うデイサービスセンターでも、最近の話題はワクチン接種だそうだ。ほとんとの人が、子どもに予約を頼んだそうだが、頑張って電話で予約をしたものの、接種日を書いた紙をなくしてしまった人。デイの職員さんに「手伝って」とお願いする人もいたそうだ。

 

予約が取れないまま数日が過ぎ、だんだん焦ってきた私。Zoomの打ち合わせ中も頭の中は「予約を取らねば」でいっぱいである。そんな時、

 

「お父さんのワクチン接種の予約はとれましたか?」

「それがまだなんですよ」

「知人の運営する特養は、ショートの利用者も、施設内接種ができるって聞きましたよ」

「へ?」

「お父さん、特養の空室利用のショートステイを利用していましたよね、ダメ元で聞いてみたらいかがですか?」

 

この一言、わが頭上に天使が舞い降りたと思ったほどだ。

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認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

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黒川 玲子

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