医師が不動産投資をはじめるとき、どんな物件を選べば効率的な運用が実現できるのでしょうか? 収益物件を選ぶファクターとして重要とされるのは「立地」と「利回り」ですが、まずは原点に戻り、建物構造について知ることからはじめることをオススメします。木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造など、それぞれの基本性能と、賃貸運営におけるメリット・デメリットを見ていきましょう。

木造、鉄骨…不動産投資にオススメの「構造」は?

不動産投資には高いレバレッジ効果が見込め、加えて節税効果も高いため、多くの高額所得者が取り組んでいます。高収入である医師も例外ではありません。手元に資産を残すためには今すぐ実践する必要があります。

 

そこでまずは建物の「構造の違い」について学んでみましょう。建物の構造を知ることは不動産投資の基点であり、収益計画に直結する事柄であるといっても過言ではありません。

 

●木造(戸建住宅、アパートなど)

日本の伝統的な建築物といえば木造住宅です。その代表的な工法が木造軸組(在来)工法であり、その他にも、北米で主流となっている木造枠組壁式(2×4〔ツーバイフォー〕)工法などがあります。

 

木造建築は天然材を使用しているので、程よい断熱性が保たれ、吸湿性に優れています。加えて2~3階建てと小規模なため、材料費や建築費が安く抑えられる点もメリットです。

 

その一方、シロアリなどの害虫被害を受けやすい、老朽化が早いというデメリットもあります。法定耐用年数は22年です。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

●軽量鉄骨造(プレハブ住宅など)

構造体に鉄の合金である鋼(Steel)を使用しているのが鉄骨造(S造)建物です。主要部材は工場で成型され、建築現場ではそれらを組み立てるだけの「プレハブ工法」が代表的です。

 

施工日数が短く、建材コストも抑えられますが、工場生産の既成建材を使用しているため、設計の自由度は低く、後年のリフォームも困難なのがデメリットです。法定耐用年数は使用される鋼材の厚さにより19年、または27年です。

 

●重量鉄骨造(アパートなど)

軽量鉄骨造と同じ鋼を使用し、鋼材の厚みが6mm以上のものを重量鉄骨構造と呼びます。

 

重量鉄骨の鋼は靭性(粘り強さ)が高く曲げ伸ばし加工が容易なため、間取り設計の自由度が高いのが特徴です。そのため、大規模店舗や体育館といった広大なスペースを必要とする中小規模の建物に向いています。

 

しかし、耐久性・耐震性・耐火性・防音性でやや劣るというデメリットもあります。法定耐用年数は34年です。

 

●鉄筋コンクリート造(マンションなど)

柱の中心に鉄筋を入れ、そこにコンクリートを注入した構造体が鉄筋コンクリート造です。圧縮に強いコンクリートと、引っ張りに強い鉄筋の性質を生かした構造で、RC(Reinforced Concrete)造とも呼ばれます。中低層のマンションに採用されることが多く、耐震性・耐火性・気密性に優れているのが特徴です。

 

その反面、気密性が高いため結露しやすく、冬は寒く、夏は室温が高くなりやすいというデメリットがあります。法定耐用年数は47年です。

 

●鉄骨鉄筋コンクリート造(高層ビルなど)

柱の中心に鉄筋と鉄骨を入れ、そこにコンクリートを注入した構造体が鉄骨鉄筋コンクリート造です。鉄筋コンクリート造の耐久性の高さに加え、鉄骨ならではの靭性を加えたもので、SRC(Steel Reinforced Concrete)造とも呼ばれます。

 

柱を細くしても建物の強度が保てるため、高層ビルやタワーマンションといった大規模建築物には最適です。

 

しかし重量があるため、建物を支える基礎部分の工期が長くなる分、建築コストも高くなります。また鉄筋コンクリート造と同様、気密性が高いため結露がしやすくなります。法定耐用年数は47年です。

 

1981年6月以降に建てられた「RC造、SRC造」が無難

<頻繁にコストがかかる「木造」>

医師の皆さんが不動産運用をはじめるに際しては、新築、中古を問わず木造は避けたほうがよいでしょう。木造の建築コストは安いのですが、劣化が早いため、予想以上にランニングコスト(建物のメンテナンス費用)がかかってしまいます。

 

木造建築でもっとも耐久性が劣るのは外壁と屋根の防水性能でしょう。築10年を過ぎると雨漏りや水漏れなどの被害が発生し、それが同じ個所で繰り返し起こるようになります。

 

木造建築は木材自身の経年劣化だけでなく、風雨や地震といった天災による構造耐力低下も著しいため、建物の価値を計る耐用年数も短く見積もられているのです。

 

<「RC造」「SRC造」は建築年に注意>

RC造・SRC造は天災に強い構造体です。屋上の防水工事は新築時から万全に施されており、外壁にはタイルなどメンテナンスしやすい建材が採用されています。

 

建物構造を問わず、投資用不動産を購入する際は1981年6月以降に建てられた物件を選ぶようにしましょう。

 

その理由は、同年5月末日までに「建築確認(建物を建てる許可を得るための役所申請)」を取った建物は、現在より甘い耐震基準で申請をクリアしている可能性が高いからです。実際、阪神淡路大震災においては1981年以前に建てられたマンションなどに多くの被害が出ています。

 

不動産業界では、1981年以前に建てられた物件を「旧耐震」、それ以降に建てられた物件を「新耐震」と呼んで差別化しています。

 

売買価格もしかり、同じエリア・広さの物件でも、1981年築と1982年築では大きく差が出ます。購入するにはお買い得ですが、売却の際に苦労すること必至です。

 

<「鉄骨造」は投資上級者向け>

鉄骨造建物の用途として代表的なものは体育館、スーパーマーケットなどの大型店舗、倉庫、工場など、居住用以外の建物がほとんどです。

 

借地に建っているケースも多く、その場合は鉄骨造ならではの建築工期の短さ、そして解体のしやすさが重宝されるかもしれません。

 

投資用物件としては事業用賃貸となるため上級者向けとなるでしょう。また、郊外に建つ1棟アパートにも鉄骨造は多いですが、隣室や上階の音や振動が気になるなど、住み心地は芳しくないようです。

「定期的なメンテナンス」こそ収益を安定させるカギ

さて、ここまでそれぞれの構造の特徴を見てきましたが、いずれの建築構造も定期的な修繕が必要です。

 

修繕を怠ると、本来は修繕が必要でなかった箇所にも傷みが広がり、手が付けられない状態になります。その結果、物件の魅力が落ち、家賃を値下げしても空室が埋まらず、収支計画が狂ってしまうという悪循環に陥ります。

 

値下げリスクは金額だけの問題にとどまりません。入居者属性の低下、ひいては家賃滞納リスクの増大にもつながります。健全な不動産運用を続けるためには、建物の修繕だけでなく、エアコンや給湯器といった主要設備のメンテナンスも含めて常に点検を怠らないことが大切です。

 

 

大山 一也

 

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