台湾は日本から学ぶものがたくさんあるという
日本には「RESAS(地域経済分析システム、通称リーサス)」というシステムがあります。このシステムは非常に優れていて、私は大いに啓発されました。RESASが優れていると思うのは、案件の提唱者が誰かとか、議員にとってそれを扱うことが有利になるか不利になるかなどには関係なく、エビデンス(証拠)に基づいた政策立案を行っている点です。
もう一つは、「RESAS de 地域探究」のように、具体的な統計データに基づいて、現地の学校がその地方におけるシンクタンクのような役割を担い、探索的な研究を行っていることです。
これらのやり方の面白い点は、それぞれの地方で行われた政策が必ずしも成功しているとは限らないということです。しかし、たとえ失敗したとしても、その試みが人口の還流に役立ったか、雇用率の上昇に役立ったかなど、どんな良い影響や悪い影響を与えたのかを知ることができます。
さらに、成功した場合、「他の地域でどの部分が応用できるか」「どうすれば成功例を別の地域でも再現できるか」を検証することができます。それを試行してみると、ある地域で成功した地方創生の事例が環境の異なる別の地域では失敗したといったようなことも起こりうるわけですが、それもまたデータとして蓄積していくことができます。
こうした各地域で収集した各種の統計資料や、中央政府が集めた資料、省庁が集めた資料、大学が集めた資料など、あらゆる種類の統計を一箇所にまとめておくのがRESASの仕組みです。これは本当に素晴らしいものだと思います。
台湾にはRESASをヒントにした「TESAS(Taiwan Economic Society AnalysisSystem)」と呼ばれるシステムがありますが、農業などの産業・経済分野とITとの連携面ではとても日本に及びません。台湾のTESASは、開始当初は政府部門や公的機関のデータ、つまり地方統計のデータを主に使っていました。それは様々な部署の資料から集めたデータですが、民間や学術研究機関の持つデータが明らかに不足しています。
年末までには国家発展委員会から新しいプラットフォームがリリースされる予定ですが、日本からはさらに多くのことを学ぶ必要があります。今後四年間は、地域で収集したデータに地域の特性や地域事業に取り組む人たちの連絡窓口などを加えたいと思っています。これらはもちろん統計資料の中には含まれていないものなので、地方創生に関わる各組織に自発的にデータを加えてもらうことになります。
同様に、地方の文化や経済発展に関心を持つ企業の情報や、その土地出身の創業者が故郷に戻りたいと思っているなどの情報は、TESAS上には掲載されていないため、他のプラットフォームに頼るしかありません。こうした部分は日本のRESASから学ぶべき部分だと考えています。
オードリー・タン
台湾デジタル担当政務委員(閣僚)
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