こんな人材が日本にも欲しかった。オードリー・タン。2020年に全世界を襲った新型コロナウイルスの封じ込めに成功した台湾。その中心的な役割を担い、世界のメディアがいま、最も注目するデジタルテクノロジー界の異才が、コロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIとイノベーション、そして日本へのメッセージを語る。本連載はオードリー・タン著『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

台湾と日本の関係はより緊密になっていく

このグローバルな訓練フレームワークの枠組みは、先に述べたように台湾とアメリカの二国間で行っていましたが、現在は台湾・アメリカ・日本が固定メンバーになっていて、国際関係の上では「ミニラテラル(Mini-Lateral)」と呼ばれています。

 

民間の部分では、台湾と日本の関係はこれからも文化的に互いを支え合いながらより緊密なものになっていくでしょう。国際関係の上では、前記のような特定のテーマでの関係を積み重ねることが極めて重要です。

 

「感染症予防の方策」「虚偽情報をどう解決するか」「循環型経済について」「海洋ゴミをなくして人が住みやすい場所にしていくこと」などは、私たちに共通する関心事です。これらの具体的なテーマを通して、「ミニラテラルな関係を発展させていきたい」というのが台湾政府の立場です。大事なのは、自分たちのやり方がすべて正しいと考えを押しつけるのではなく、お互いに意見を出し合い、助け合うことです。

 

それを前提にして、台湾と日本とのこれからの交流について、私は次のように考えています。一つは、前述したとおり、私たちは地震をはじめ様々な自然災害と隣り合わせで生きているということです。自然に対して絶対に打ち勝つことはできません。自然災害が発生したとき、工学や科学で天候をコントロールすることは不可能で、それが可能であるというようなきれいごとは言いたくありません。

 

むしろ人間の力に限界があると知ることにより、私たちが交流する中で、これまで気づいてこなかった多くの良いアイデアが生まれるだけでなく、それらを互いに共有することで、共に発展する関係につながっていくのだと思います。

 

台湾と日本の友好のプロセスは、自然災害による助け合いであれ、人災による助け合いであれ、非常に多く厚い基盤があり、今後さらに緊密になっていくでしょう。私たちはともに民主主義社会の前進に挑んでいます。その点でも、団結できることが多々あります。

 

日本の「RESAS」(地域経済分析システム)から学んだこと

 

その一方で、台湾として日本から学ぶものがたくさんあります。たとえば、私たちも使っている「地方創生」の四文字は、日本から持ってきた言葉です。この言葉を台湾で使うようになったのは、都市部の人口過密化や高齢化などの問題に日本が我々よりも早く直面していて、五〜六年前の日本の状態を見れば、一〜二年後の台湾がどうなるかが想定できると考えたからです。

 

日本では、「高齢者を社会の中に巻き込んでいくためにどうするか」「都市部への人口流出を理由とせずに地方の特色を消失させないためにどうすればいいか」などについて、数多くの実践が行われています。私たちの政府や民間も、日本の地方創生問題を扱う組織と盛んに連携しています。これこそが台湾が「地方創生」という四文字を中国語に翻訳せずに使っている理由です。日本語をそのまま残すことで、日本から学んでいることを明らかにしているのです。

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オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る

オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る

オードリー・タン

プレジデント社

2020年に全世界を襲った新型コロナウイルス(COVID‐19)の封じ込めに、成功した台湾。その中心的な役割を担い、2020年新型コロナウイルス禍においてマスク在庫管理システムを構築、台湾での感染拡大防止に大きな貢献を果たす。…

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