罰則は過少申告加算税、無申告加算税、重加算税と
しかも、見逃してはいけないのは、加算税の税率を掛ける金額の違いです。
たとえば、Aさんが本来申告すべき所得税が100万円だったとします。このAさんが、「期限内に80万円で申告をしていた場合」と「期限後に申告をした場合」を比較してみます。
前者の場合、過少申告加算税の税率が10%だとすると、その額は以下のように計算されます。
(100万円ー80万円)×10%=2万円
つぎに、後者の場合を計算します。この場合、無申告加算税の税率は15%と仮定します。
(100万円ー0円)×15%=15万円
いかがでしょうか。加算税そのものの税率の差は5%ですが、その額をくらべると、7.5倍もの差があります。これは算式からもわかるとおり、過少申告加算税の場合、期限内に申告していた税額分は対象にならないからです。
しかも、過少申告加算税については、みずから申告のやり直し(修正申告といいます)をした場合、対象外にするというルールがあります。これは、税務調査の通知がくるまでに限定されているのですが、要は税務署から指摘を受ける前であれば、自分から修正申告をすれば、加算税はまったくかからないというケースもあります。
一方、無申告加算税の場合は、みずから期限後に確定申告をしても、最低5%は課されます。期限から1日遅れただけで、このように不利な状況になってしまうのです。
さらにもうひとつ、忘れてはならないのが、3月15日は確定申告の期限であると同時に、納税の期限でもあるという点。たとえ確定申告が期限内にできたとしても、納税が遅れれば「延滞税」という別の追徴税が課されます。
じつは、期限内に申告をしておいたほうがいいというのは、延滞税の側面からもいえます。なぜなら、たとえ計算した税額を間違えていたとしても、期限内に確定申告をして、その金額を納税しておけば、未納の税額を少なくすることができるからです。
まとめると、確定申告についてのペナルティには過少申告加算税、無申告加算税、重加算税があります。そして税金の未納に対するペナルティは延滞税です。まずは期限内に確定申告をすることを徹底してください。そのうえで、内容に自信がないのであれば、できるだけ早めに内容を確認して、必要に応じて自主的に修正申告をすると安心です。
一番怖いのは、間違えたまま放置しておいて、税務調査を受けることです。そうすると追徴税がかなり増えてしまいますから、そういった状態にならないように早めに確定申告の準備をしておきましょう。
本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2021年4月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。
小林 義崇
フリーライター 元国税専門官
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