暗号資産(仮想通貨)の急落で米国小型成長株が下落した背景

5月21日現在、暗号資産のビットコインは今月の高値(5/8)から安値(5/21)まで40%急落したほか、暗号資産とは全く関係の無い木材先物価格も今月の高値(5/7)から安値(5/18)まで24%急落した。金融市場ではFRBのテーパリング観測等を背景とした「リターン・リバーサル」の動きが広がっており、期待先行で上昇していた米国小型成長株指数も連れ安の展開となった。

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「リターン・リバーサル」を増幅させたのはFRBのテーパリング観測か?

5月12日に発表された4月米国CPI(消費者物価指数)は前年同月比+4.2%となり、市場予想の同+3.6%を大きく超え、2008年以来の大幅な物価上昇率となった。このインフレ率の上振れをきっかけに、FRB(米国連邦準備制度理事会)のテーパリング(量的緩和の縮小)観測がより強く意識され、リターン・リバーサル(リターンが高かった金融資産が短期間で値下がりする現象≒値上がりした投資資産をひとまず売却する動き)を増幅させたと考えられる。

 

日次、米ドル建て、株価指数は配当込み、2020年5月末=100で指数化 期間:2020年5月末~2021年5月21日 ※木材先物価格:CME Generic 1st Lumber Future、米国小型成長株指数:Russell Microcap Growth Index Total Return、先進国株指数:MSCI World Net Total Return USD Index 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表1]各金融資産の価格推移(約1年間) 日次、米ドル建て、株価指数は配当込み、2020年5月末=100で指数化
期間:2020年5月末~2021年5月21日
※木材先物価格:CME Generic 1st Lumber Future、米国小型成長株指数:Russell Microcap Growth Index Total Return、先進国株指数:MSCI World Net Total Return USD Index
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

もちろん急落した金融資産にはそれぞれ固有の要因がある。例えば、暗号資産(仮想通貨)のビットコインであれば、電気自動車大手テスラの創業者であるイーロン・マスク氏が、(今年3月にビットコインでテスラ車を購入可能と発表したにもかかわらず)ビットコインでのテスラ車購入の受付停止を発表したことや、中国当局が暗号資産の規制強化に動いたことなどが挙げられる。

 

また、木材であれば製材所の稼働率改善と在庫の積み上がりなどが指摘されている。4月米国住宅着工件数(年率換算)が市場予想の170万戸に対し実績が157万戸となったことも下落要因として挙げられるだろう。

 

日次(終値)、米ドル建て、株価指数は配当込み、ビットコイン価格(高値5/8、安値5/21)、木材先物価格(高値5/7、安値5/18)、米国小型株指数(高値5/3、安値5/13)、先進国株指数(高値5/7、安値5/12) ※木材先物価格:CME Lumber Future Jul21、米国小型成長株指数:Russell Microcap Growth Index Total Return、先進国株指数:MSCI World Net Total Return USD Index 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表2]各金融資産の最大下落率(今年5月における高値から安値までの騰落率)※2021年5月21日時点 日次(終値)、米ドル建て、株価指数は配当込み、ビットコイン価格(高値5/8、安値5/21)、木材先物価格(高値5/7、安値5/18)、米国小型株指数(高値5/3、安値5/13)、先進国株指数(高値5/7、安値5/12)
※木材先物価格:CME Lumber Future Jul21、米国小型成長株指数:Russell Microcap Growth Index Total Return、先進国株指数:MSCI World Net Total Return USD Index
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

つまり、FRBのテーパリング観測がくすぶる中で、各金融資産固有の悪材料が重なった結果、金融市場全体のボラティリティ(変動性)が高まり、期待先行で上昇していた米国小型成長株指数も連れ安の展開になったと考えられる。

「リターン・リバーサル」一巡後は「業績相場」へのシフトが意識される可能性

金融市場のボラティリティ上昇に伴う「リターン・リバーサル」は、投資家のポジション調整が完了するまで続くことが予想される。だが、このポジション調整が一巡した後は、FRBのテーパリング観測も相当程度織り込まれていると考えられるため、その先の株式市場は「金融相場」から「業績相場」へのシフトがより強く意識されることになるだろう。

 

そのような局面になれば、利益の黒字転換が数年先になると予想され、期待先行で株価が急上昇していた米国小型成長株指数は、FRBの流動性供給の鈍化がバリュエーション面で悪材料となるかたちで、さらに投資家から敬遠される可能性がある。(テーパリング観測が逆に後退するリスクにも留意する必要はあるが)米国小型成長株指数の下落が「リターン・リバーサル」による一過性の動きにとどまらないシナリオも、視野に入れておくべきだろう。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『暗号資産(仮想通貨)の急落で米国小型成長株が下落した背景』を参照)。

 

(2021年5月24日)

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社 

ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたアクティブ・ファンドの運用を担当し、北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードを受賞。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当し、新興国株式にも精通。ピクテ入社後は、ストラテジストとしてセミナーやメディアなどを通じて投資家への情報提供に努める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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連載PICTETマーケットレポート・Deep Insight

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