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「リターン・リバーサル」を増幅させたのはFRBのテーパリング観測か?
5月12日に発表された4月米国CPI(消費者物価指数)は前年同月比+4.2%となり、市場予想の同+3.6%を大きく超え、2008年以来の大幅な物価上昇率となった。このインフレ率の上振れをきっかけに、FRB(米国連邦準備制度理事会)のテーパリング(量的緩和の縮小)観測がより強く意識され、リターン・リバーサル(リターンが高かった金融資産が短期間で値下がりする現象≒値上がりした投資資産をひとまず売却する動き)を増幅させたと考えられる。
もちろん急落した金融資産にはそれぞれ固有の要因がある。例えば、暗号資産(仮想通貨)のビットコインであれば、電気自動車大手テスラの創業者であるイーロン・マスク氏が、(今年3月にビットコインでテスラ車を購入可能と発表したにもかかわらず)ビットコインでのテスラ車購入の受付停止を発表したことや、中国当局が暗号資産の規制強化に動いたことなどが挙げられる。
また、木材であれば製材所の稼働率改善と在庫の積み上がりなどが指摘されている。4月米国住宅着工件数(年率換算)が市場予想の170万戸に対し実績が157万戸となったことも下落要因として挙げられるだろう。
つまり、FRBのテーパリング観測がくすぶる中で、各金融資産固有の悪材料が重なった結果、金融市場全体のボラティリティ(変動性)が高まり、期待先行で上昇していた米国小型成長株指数も連れ安の展開になったと考えられる。
「リターン・リバーサル」一巡後は「業績相場」へのシフトが意識される可能性
金融市場のボラティリティ上昇に伴う「リターン・リバーサル」は、投資家のポジション調整が完了するまで続くことが予想される。だが、このポジション調整が一巡した後は、FRBのテーパリング観測も相当程度織り込まれていると考えられるため、その先の株式市場は「金融相場」から「業績相場」へのシフトがより強く意識されることになるだろう。
そのような局面になれば、利益の黒字転換が数年先になると予想され、期待先行で株価が急上昇していた米国小型成長株指数は、FRBの流動性供給の鈍化がバリュエーション面で悪材料となるかたちで、さらに投資家から敬遠される可能性がある。(テーパリング観測が逆に後退するリスクにも留意する必要はあるが)米国小型成長株指数の下落が「リターン・リバーサル」による一過性の動きにとどまらないシナリオも、視野に入れておくべきだろう。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『暗号資産(仮想通貨)の急落で米国小型成長株が下落した背景』を参照)。
(2021年5月24日)
田中 純平
ピクテ投信投資顧問株式会社
ストラテジスト
日本経済の行方、米国株式市場、新NISA、オルタナティブ投資…
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