IPOに向く起業家は「鈍感力」が強い人
IPOを実現させることを起業家としての目標にしている人も多いでしょう。会社をIPOさせて、プライベートカンパニーからパブリックカンパニーとなり、多くの投資家に株主となる機会を提供すること、また株式市場から調達した多額の資金を用いて事業成長を目指すことは、非常に意義のあることです。
上場企業となれば、会社の信用力やブランド価値は一気に高まり、それはビジネス上でもファイナンス上でも有利に働きます。また上場企業の一員というステータスは、役員や社員にとっても幸福感や満足感をもたらし、ストック・オプションのような形で、経済的なインセンティブを与えることもできるようになります。
もちろん、起業家自身にとっても、創業した会社を上場させたという事実は最上級の栄誉であり、個人にもブランド価値をもたらします。保有している株式の価値は何十倍、時には何百倍・何千倍にも上昇しますので、資産という点から見ても、一気に大資産家の仲間入りができます。
ただし、IPOにはデメリットもあります。その一つが、IPOをした場合はM&Aイグジット※に比べて起業家に入るキャッシュは少ないということです。
※自己資金を投じて会社を起ち上げた起業家が、M&Aでその会社(株式、または事業)を売却すること。起業家はM&Aによって多額の資金を得ることができる。
確かに保有株式の価値は高まり、資産価値は上昇しますが、それは現金化がほとんどできない資産です。創業社長は最もインサイダー情報を保有しているといえるので、市場で株式を売買することに制限がかけられるためです。
また、創業社長が株を売ったとなれば、それを知った投資家はその会社の株価が下がると判断し一気に売りに回ることがあるためです。
IPO時には、公開前のブックビルディングの段階で決定された公開価格で、いくらかの保有株式を売却することはできますが、M&Aイグジットで全株を売却することに比べれば、10分の1程度のキャッシュしか得られないことも普通です。
それでも、数億円・数十億円の現金と、その数十倍の株式資産価値が得られるのならそれでいいという考え方もできるので、そこは起業家の考え方次第でしょう。
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