高齢化、人口減少…全国で問題になっている空き家問題。大阪経済法科大学経済学部教授の米山秀隆氏の書籍『限界マンション 次に来る空き家問題』(日本経済新聞出版社)より一部を抜粋・編集し、空き家率について解説します。

2033年に予測される「空き家率」が恐ろしい

まず、今後の住宅需要、つまり世帯数については、国立社会保障・人口問題研究所の推計に基づくものとした。推計によれば、日本全国の世帯数のピークは2030年、東京都の世帯数のピークは2035年で、以降は減少していく。

 

日本全体の人口はすでに減少しているものの、単身世帯の増加など世帯の小型化によって、世帯数はまだ減少に転じていなかったが、今後は減少に向かっていくことになる[図表1]。

 

[図表1]20年後の空き家率 新設住宅着工戸数の平均的水準は、2010~12年の平均とした。 滅失率=(5年間の新設住宅着工戸数の合計-5年間の総住宅数の増加数)/5年間の新設住宅着工戸数の合計 世帯数の予測は、国立社会保障・人口問題研究所に基づく
[図表1]20年後の空き家率
新設住宅着工戸数の平均的水準は、2010~12年の平均とした。
滅失率=(5年間の新設住宅着工戸数の合計-5年間の総住宅数の増加数)/5年間の新設住宅着工戸数の合計
世帯数の予測は、国立社会保障・人口問題研究所に基づく

 

次に供給側の想定であるが、新設住宅着工戸数が今後も直近の平均的な水準で推移していき、住宅取り壊しのペース(滅失率)もまた直近の平均的な水準で推移していくという場合を「ケース1」※とした。

※「ケース1」新設住宅着工戸数:作成時の平均的水準で推移、滅失率:10年間(2003~2013年)の平均で推移

 

つまり、ケース1は現状維持である。次に、新設住宅着工戸数を段階的に減らしていって最終的に半減させ、滅失率については徐々に上昇させていって最終的に2倍になるという場合を「ケース2」※とした。

※「ケース2」新設住宅着工戸数:作成時の平均的水準から5年ごとに段階的に減少し、最後の5年間(2029~33年)の水準はその半分の水準になると想定。滅失率:10年間(2003~2013年)の平均から段階的に上昇し最終的に2倍になると想定

 

ケース1の場合、全国の空き家率は2033年には28.5%に達する。一方、東京都の空き家率は、1998年頃までは全国とほぼ同じ水準で推移していたが、その後地方で先行して人口・世帯の減少が始まったため、全国の空き家率が東京都の空き家率を上回るようになっていた。

 

しかし、今後は、東京都でも世帯数が減少に向かっていくため、次第に全国の空き家率に追いつき、2033年には全国とほぼ同じ28.4%になるという結果が得られた。一方、ケース2では、空き家率の上昇ペースは抑制されるが、それでも2033年には全国で22.8%、東京都で22.1%になるとの結果となった。

 

新築を半減させて(足りない分は中古の活用を進める)、取り壊しのペースを2倍に上げていったとしても、空き家率を低下させることは難しいことをしている。

 

今後、空き家問題がより一層深刻化していくのは確実な情勢である。これらの試算結果は、現状では空き家問題が深刻なのは地方であるが、今後は、東京などの大都市でも世帯数が減少に転ずることにより、問題が深刻化していくことを示している。

 

 

米山 秀隆

大阪経済法科大学経済学部教授

 

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(出所)
総務省「住宅・土地統計調査(確報集計)」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」2013年1月、「日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)」2014年4月により作成

限界マンション 次に来る空き家問題

限界マンション 次に来る空き家問題

米山 秀隆

日本経済新聞出版社

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