ガソリン車から「EV(電気自動車)」への流れが加速
日本では、2030年代半ばに新車販売においてガソリン車をゼロにする動きがあります。それに先立って、東京都では2030年にはガソリン車の販売をゼロにするという方針を打ち出しています。
それに対して、EUは2021年に罰金ありの厳しい「排出ガス規制」を導入しました。また、国別では、イギリスは2030年、フランスは2040年にはガソリン車の販売を禁止すると発表しました。
さらに、米国は、政府車両の65万台をEVに置き換える発表しています。そして、カリフォルニア州では、2035年にはガソリン車の販売を禁止する動きが出ています。
中国も、2035年までにすべての新車販売を環境対応車(ハイブリッド車を含む)にし、そのうちの50%をEVにするという方針を発表しています。このように、ガソリン車からEVへの大きな動きが世界中で起こっています。
【図表1】は、2019年の世界の自動車販売台数です。
世界全体では約9,200万台が販売されていますが、世界最大のマーケットは2,850万台の中国で、1,750万台の米国が続きます。そのため、EV市場においては、中国と米国の動きが大きく影響することがわかります。
ちなみに、メーカー別のEV世界販売ランキング(プラグインハイブリッドを含む)を表したのが【図表2】です。
1位はテスラで、2020年に50万台を販売しています。2位がフォルクスワーゲン、3位が中国のBYDが続いています。残念ながら、日産自動車やトヨタはランキングのトップ5に入っておらず、日本ではまだEVの販売台数が少ないのが現状です。
現在、EV占有率はわずか3%ですが、EVは今後大きく普及していくと考えられます。ブルームバーグの資料によると、2040年の世界の乗用車販売のうち、58%がEVになるだろうと言われています。また、ここから20年でEVが32倍になるという他のデータもあります。
今後10年、20年の期間で見た場合、EVは非常に大きく成長する分野だと筆者は考えます。
EVに欠かせない「バッテリー」の開発にも注目が集まる
EVのなかでも肝となるのが「バッテリー」です。現在の主流は「リチウムイオン電池」で、大容量電力を蓄電でき、繰り返し利用できるなどのメリットがあります。
その一方、高温に弱く、発火してしまうデメリットもあります。以前には、テスラ車による発火事故のニュースもありました。ちなみに、このリチウムイオン電池には、レアメタル(リチウム、ニッケル、コバルト、マンガン等)と呼ばれる金属が必須になります。
また、現在開発段階にあるのが「全固体電池」で、「夢のバッテリー」とも呼ばれています。リチウムイオン電池のデメリットを補うと言われており、液体ではなく固体を電解質に利用する安全性が注目されています。2021年1月に、中国のNIOというEVメーカーが、この全固体電池を使ったバッテリーを、2022年に発売する新車に搭載すると発表しました。この動きも非常に注目です。
それでは、どのような企業がEV市場に関わっているのかを確認しておきましょう。一部を紹介しますので、株式投資をする際の参考にしてください。
●海外:LG化学(韓国)、サムスンSDI(韓国)、CATL(中国)、BYD(中国)
●国内:TDK、パナソニック、村田製作所
【全固体電池】※開発段階
●海外:フォルクスワーゲン(独)、現代自動車(韓国)、CATL(中国)NIO(中国)
●国内:トヨタ自動車、日産自動車、村田製作所、TDK、出光興産、マクセル
【レアメタル】
●海外:ピルバラ・ミネラルズ(豪)、ガンフォンリチウム(中国)、リチウムアメリカ(米)
●国内:住友金属鉱山、東邦チタニウム、三井海洋開発、中外鉱業
次ページでは、EV市場が抱える2つの不安要素について見ていきます。
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