投資では、感情が邪魔をすると合理的な判断ができない
米国のダルバー社が調べた、株式と債券の代表的な指数と、その投資信託を保有していた人の平均的なパフォーマンスを比べたものが、[図表1]です。
株式にしろ、債券にしろ、投資家のパフォーマンスは、指標よりもはるかに劣っていることがわかります。この差を「行動ギャップ」といいます。なぜこのような結果になってしまうのでしょうか?
それは、投資では「感情が邪魔をするから」です。人間は感情で動く生き物であって、ときに非合理的な行動をとってしまいます。
たとえば、今10万円が手に入ったとします。ところが、10万円を手にした経緯が異なると、考えることも違ってきます。
例を挙げて説明すると、この10万円は競馬で勝ったお金だとします。その場合、「ギャンブルで勝ったお金だからパッと使っちゃおう!」と思うかもしれません。一方、帰省したときに大好きなおじいちゃんからお小遣いでもらった10万円だとしたら、「おじいちゃん、ありがとう! 大切にするね。」と考え、何に使うか悩むに違いありません。
合理的に考えればどちらも同じ「10万円」ですが、手にした経緯によって価値は異なります。このように、心のなかでお金に色をつけて判断してしまうことを「メンタルアカウンティング」といいます。
もう一つ例を挙げて説明します。
人間は、安全あるいは安全と思われるものを求めて、人と同じ行動をついとってしまいます。たとえば、並んでいるラーメン屋さんと並んでいないラーメン屋さんのどちらに入りますか?
多くの人は、並んでいるラーメン屋さんに入るでしょう。あるいは、レストランに行ったら一番人気のメニューを食べませんか? 人間は他の人と同じ行動をとることで安心します。これを「群衆心理によるハーディング現象」と呼びます。
2009年のリーマンショックは、まさにこのハーディング現象による「サブプライムローン」の購入が原因の一つと言われています。みんなで渡れば怖くない、といった状況が大暴落を引き起こしたきっかけと考えられます。
また、ビットコイン(暗号資産)が話題になったとき、まったく知識のない人も我先に飛びついたのではないでしょうか? その結果、「高値掴み」になってしまった人もいるでしょう。これも、ハーディング現象によるところが大きいと思われます。
さらにもう一つ、例を見てみましょう。これからお金に関する質問します。2択の質問なので、あなたはどちらを選ぶか考えてみてください。
B.コインを投げて表が出たら2万円がもらえるが、裏ならお金はもらえない
さて、あなたはどちらを選びましたか? 実はこの質問に対しては、多くの人がAの「無条件で1万円がもらえる」を選びます。
では、1万円を手にできたところで、もう一つ質問します。
B.コイン投げは行わない
さて、今度はどちらを選びましたか? 今度は多くの人がB「コイン投げは行わない」を選びます。
このことを、「プロスペクト理論(損失回避性)」と言います。人間は利益が出る可能性があるときは、利益が手に入らないことを避けようとします。そして、損失が出る可能性があるときは、損失を避けようとするのです。
この損失回避性によって、株式投資であれば、買った銘柄の株価が上がったときは早めに利益確定の売りをしがちです。また、値下がりして評価損を抱えてしまったときは、なかなか損切りができません。
このように、人間は合理的な判断を感情が邪魔をしてしまう生き物なのです。
では、投資で成功するにはどうすればよいのでしょうか? 筆者からのアドバイスは、次の3つです。
●長期的な投資を心掛ける
●投資の目的を定め、目的達成にフォーカスする
それでも感情に左右されてしまう人は、間違った行動をとらないように、冷静にアドバイスをしてくれる人を見つけるか、次に説明する毎月一定の金額を積み立てる「ドルコスト平均法」で運用することをおすすめします。
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