現在、公的年金だけで暮らす高齢者の数は全体の約半数にのぼるといわれています。限られた年金や預貯金で暮らすには、正しい知識で資産を防衛し、運用することが大切です。今回は、全財産を銀行に預金することの是非について見ていきます。※本連載は、岩崎博充氏の著書『「年金20万・貯金1000万」でどう生きるか - 60歳からのマネー防衛術 -』(ワニブックス)より一部を抜粋・再編集したものです。

「金融機関がすすめする商品」を買ってはいけない理由

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

こうした現実を踏まえ、最近は銀行も個人投資家から資金を集めて運用する「投資信託」や「貯蓄性のある生命保険」を販売するなどさまざまな金融商品を販売しています。

 

銀行や証券会社は自社系列の投資信託運用会社を傘下に持っています。中には素晴らしい運用成績を上げている運用会社もありますが、日本の金融機関は、あいかわらず本社の都合で「キャンペーン商品」を顧客に無理やり売りつける、というのが主流です。

 

銀行や証券会社の多くは、投資信託について3%近い販売手数料を徴収しています。これに投資信託の運用費用である「信託報酬」の3%前後を加えると、購入した年は6%近い額を徴収されることになります。インデックスファンドなどもっと安いものもありますが、こんな手数料ビジネスは世界では通用しない「悪徳商法」です。

 

また最近は、運用方針を示すだけであとは丸投げの「ファンドラップ」が主流になっていますが、この運用手数料の高さも問題視されています。

 

投資信託は、運用戦略にもよりますが、大切な顧客の財産を長期保有することで守ることが目的の金融商品ですから、本来他の商品以上に「顧客重視」が求められるものです。しかし日本の金融機関は、企業融資などの実績が上がらない分、個人顧客に投資信託を勧め、高い信託報酬や販売手数料を取ることで補ってきたのです。

 

まず、その実態を知っておいてください。手数料は証券会社よりは銀行のほうがやや低く、この5年で少しずつ下がっていますが、海外と比較すると高い。こうした現実に金融庁も対策に乗り出し、高い手数料を取っておきながら運用成績の悪い投資信託が多いことを指摘、厳しく批判しました。

 

投資信託などに興味を持って金融機関の窓口を訪れる時に頭に入れておいてほしいことは、「窓口担当者は本部から指示された投資信託や保険を強く勧めるのが基本で、顧客の資産運用の状況や家族構成、生活スタイルなどをじっくり考えて商品を勧めてくれるわけではない」ということです。

 

もちろん、資産の状況を考えた上でアドバイスをしてくれる銀行や証券会社も以前よりは増えてはいますが、やはり海外の銀行などがやっている「アドバイザリー型資産運用」の域までは達していないようです。

 

また、実際にこうした運用をしたくても、海外のアドバイザリー型資産運用の最低預入金額は数千万単位と高額な場合が多く、1000万~2000万円程度の預金しかない日本の普通のサラリーマンには敷居が高いでしょう。

 

銀行や証券会社のファイナンシャルプランナー(FP)は、どうしても所属する金融機関の金融商品を勧めるケースが多くなります。できれば、複数の金融機関のファイナンシャルプランナーに同じ条件で相談してみて、提案された商品の内容やポートフォリオの構成を比較してみるといいのではないでしょうか。いずれにしても銀行の定期預金に頼った資産管理からは可及的速やかに脱出しましょう。

 

岩崎 博充

経済ジャーナリスト

 

 

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岩崎 博充

ワニブックス

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