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「あと何年生きられそうか」想定して老後資金を考える
定年後の老後生活を考えた時、最初に考えるのが「いったい自分は何歳まで生きることになるのだろうか」という疑問です。将来のことは誰にもわかりませんが、ある程度の寿命は想定して、老後資金を考える必要があります。退職金を含め、老後資金として貯めたお金をどう配分すればいいのか。そうした資金計画は不可欠と言えます。
とはいっても、大ざっぱな性格の人はきちんとしたシミュレーションまではしていないでしょうし、また先のことをあまりにも綿密に試算してもムダなのも事実です。
そもそも地球上には一触即発の地域がどんどん増え、日本を含め連日気温が40度を超すような地域が増えつつある地球温暖化の影響は、人類そのものの生存さえ脅かしつつあります。こんなご時世で、20年先、30年先の生活を考え過ぎてもあまり意味はありません。
とりあえず、「今後10年程度」をどんなイメージで暮らせばいいのか、といったことから考えてみてください。その際、言うまでもなく公的年金や自分が用意した個人年金の収入などはきちんと把握しておきましょう。実は60歳目前で「自分は何歳からいくら年金をもらえるのか」をわかっていない人もけっこう多いのです。まずはそこから始めましょう。
公的年金の場合、ほとんどが終身年金で死ぬまでもらえますが、個人年金などはたとえば80歳で終わってしまうものなどもあります。
少なくとも、老後の生活プランを考える時に、自分自身があと何年生きるのかを、ある程度はシミュレーションしておくことが大切だということです。実際に、日本人の平均寿命は厚生労働省の最新のデータでは次のようになっています。
平均寿命(2019年)
●男性…81.41歳
●女性…87.45歳
ちなみに、半数以上が生存していると推定される「寿命中位数」という数字で見ると、次のようになります。
平均寿命・寿命中位数(2018年)
●男性…84.23歳
●女性…90.11歳
つまり、今生きている女性の半数は90歳以上まで生きるということになります。
一方、いま注目されている数字に、自立して生活できる年齢を示す指標「健康寿命」というものがあります。健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のこと。
日本の場合平均寿命は長いものの、この健康寿命が意外に短く、高齢者が健康で暮らせる長寿社会とはなかなか言えない現実があります。
健康寿命(2016年)
●男性…72.14歳
●女性…74.79歳
平均寿命よりも「健康寿命」を伸ばすほうが大切な理由
日本人の平均寿命の長さは昔から知られたことですが、健康寿命の短さには驚いた人も多いのではないでしょうか。男性は72歳、女性は74歳、それ以後は誰かのサポートがなければ生きていけない現実があるということです。
男性は約12年間、女性は約15年間、健康とは言えない状態が続くことになる可能性が高く、その期間は介護保険制度を利用したり、配偶者や子供にも何らかの負担をかけることになります。
平均寿命をさらに伸ばすことよりも、健康で暮らせる期間をできるだけ長くすることが、日本の健康政策上もっとも大切なのは自明です。
仮に政府の「高齢者も働け」という掛け声に応えて70歳まで働いてリタイアした場合、平均寿命までは男性で14年間ほどありますが、健康寿命で見るとわずか2年間しかありません。
完全にリタイアしてから、老後を楽しむ時間がたった2年とは、あまりにも寂しい人生です。女性の場合は「不健康期間」が20年近く続くことになるのですから、さらに深刻です。
働き続けたからこそ元気な時間が長くなる、という可能性もありますし、体力的な個人差はあるでしょうが、周囲の友人たちを見ていても、人間の体は70代にさしかかってから、目に見えて衰えていくように思います。寝たきりになるわけではなくても、体力が衰えるスピードが速くなっていく印象です。
岩崎 博充
経済ジャーナリスト