「確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年このような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

手続きと使い方が面倒な「教育資金特例」

具体例で説明していきましょう。教育資金特例を使う場合、最初にやるべきことは専用口座の開設です。この口座に、教育資金として贈与する金額を贈与者が入金します。

 

この口座から、受贈者は教育費が必要になった都度、必要な金額だけを引き出します。たとえば、大学の入学金200万円を払ったとしたら、その領収書等を、専用口座のある窓口に持参すると、200万円を引き出すことができます。

 

このような基本的な手続きを経たうえで、専用口座の契約は「受贈者が30歳に達した日」など、いくつかのタイミングで終了します。そして、終了した時点で口座に残っている資金があれば、その資金に対して贈与税が課せられる可能性があります。

 

このように、住宅取得資金贈与の特例にくらべると、教育資金特例は手続きが複雑です。「どれくらいの金額を専用口座に入れておくべきか」を判断するのも難しいでしょう。住宅取得資金なら、自宅の購入費というはっきりした基準があるから考えやすいですが、教育費は、子や孫の考えや受験結果にも左右されるからです。

 

しかも、じつは両親や祖父母が、子や孫の教育資金を、必要になる都度支払っても、そもそも贈与税はかかりません。

 

たとえば、子どもが大学に入学するタイミングで、親や祖父母が入学金を200万円支払うといったことは普通のことでしょう。こういった場合、贈与税の確定申告は必要ありません。親子間、あるいは祖父母と孫の関係であれば、扶養義務があるので、必要になる都度、教育資金を負担する分には、まったく問題ないのです。

 

本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2021年4月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。

 

小林 義崇
フリーライター 元国税専門官

 

 

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確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

小林 義崇

河出書房新社

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