「確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年このような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

親からの生前贈与「毎年と一括」どっちがトク?

正解:「暦年課税制度」を使って毎年110万円ずつ生前贈与をする

 

贈与税の計算方法に関して、「暦年課税」と「相続時精算課税」という2種類があると説明しました。この選択に迷う人は少なくありません。

 

両者のうち、基本となる計算方法が「暦年課税」です。年間110万円まで非課税で、110万円を超えると10~55%の税率で贈与税がかかるという方法です。

 

生前贈与による相続税対策は、できるだけ早くから考えておくべきだという。(※写真はイメージです/PIXTA)
生前贈与による相続税対策は、できるだけ早くから考えておくべきだという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

ここで、60歳以上の父母や祖父母から、20歳以上の子や孫に対する贈与であれば、暦年課税ではなく、「相続時精算課税」に変更することができます。

 

相続時精算課税制度を選択すれば、最高で2500万円までを非課税にすることができますし、超えたとしても税率は一律20%です。これだけを聞くと、暦年課税よりも相続時精算課税制度のほうが有利と思うでしょう。

 

しかし、ふたつの意味で注意が必要です。

 

まず、非課税枠の計算について。暦年課税の場合、年間110万円が非課税枠です。しかし、相続時精算課税の場合、生前贈与の「累計額」に対して2500万円の非課税枠が設けられています。イメージしにくいと思いますので、具体例で説明しましょう。

 

たとえば、Aさんという人が、令和元年に父親から2000万円の贈与を受けて、相続時精算課税制度を選択したと考えてください。そうすると、2500万円以内ですから、非課税となります。そして、翌年に繰り越される節税枠は、2500万円ー2000万円=500万円に減ります。

 

さらに時を経て令和10年に、Aさんが父親から2000万円を贈与されたとします。このときに残っている非課税枠は500万円しかありませんから、2000万円ー500万円=1500万円に対して20%の贈与税がかかってしまいます。

 

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確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

小林 義崇

河出書房新社

クイズ形式で出題。ベスト・チョイスはどっちか? 青色申告or白色申告。開業届を出すor出さない。家族を雇うorパートを雇う。iDeCo or小規模企業共済。郵送で申告or e‐Tax。国税専門官として数多くの申告相談に携わった著者…

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