教育熱心なお母さんが陥りがちな落とし穴
~「勉強って楽しそう」という期待~
息子が幼稚園児だったときの参観日のことです。教室に飾ってある園児たちの絵を見て、私は唖然としました。色とりどりの絵のなかで、わが子の絵だけ奇妙に目立っていたのです。
自分の姿を描いたのでしょうが、頭の下から足が出て、耳の横から手が出ていました。それまで、わが子の絵が上手だとか下手だとか気にしたことはありませんでした。他の子どもと比べる機会がなかったからです。
しかし、クラスメートの絵が並べて貼ってあると、いやがおうでも隣の絵と比べてしまいます。わが子の絵の下手さ加減に正直なところ焦りました。
家でお絵描きの練習をさせたほうがいいのだろうかと悩みました。息子は家でもほとんどお絵描きをしたことがなく、積み木遊びや工作に夢中でした。いまならば、「他の子どもと比べることに意味はない」ということがわかりますが、当時はそんな余裕もなく、はじめて見せつけられた優劣にショックを受けました。
・どうしても焦ってしまうのが母親の証(あかし)
私と同じように、多くのお母さんは子どもが赤ちゃんからよちよち歩きの頃は、まだまだ子育てに余裕があります。しかし、幼稚園や保育園に入る頃から急に余裕がなくなります。それは、「勉強」という文字が見え隠れするようになるからです。
幼稚園ではまだランクづけはありませんし、具体的な勉強もありません。ただ、お絵描きの上手下手とか、隣の子はひらがなが書けるのにわが子はまだ書こうともしないとか、そういった点で「学力」の芽が見えはじめると、どうしても焦ってしまうものです。
そのときに、わが子は優れていると漠然とでも思えれば、まだ余裕をもって接することができますが、少しでも劣っているように見える場合、心穏やかではいられません。
また、決して劣ってはいなくても、親が不安に思うと、「転ばぬ先の杖」で、早く勉強を始めたほうがいいのではないかと思いがちです。
私は小学校入学前にたし算やひき算を教えたり、文字を書かせたりする、いわゆる「お勉強」をさせることには賛成できません。
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