資産運用を始めようと思っても、誤った知識のまま始めてしまうと、あとから取り返しがつかないことになりかねません。運用経験が豊富な現役ファンドマネージャーの塚口直史氏が、正しい資産運用の知識を解説します。今回は、不動産投資を行う際の注意点についてです。※本連載は、同氏の著書『世界第3位のヘッジファンドマネージャーに日本の庶民でもできるお金の増やし方を訊いてみた。』(朝日新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

不動産の収益力を示す「キャップレート」とは?

不動産投資の利回りを見るうえで重要な指標があり、それをキャップレートと言います。「Capitalization Rate(キャピタリゼーションレート)」の略ですが、このレートは投資にあたっての一つの指標と言っていいでしょう。

 

たとえば東京の住宅だと、最近のキャップレートは4%程度まで下がっていると聞きます。この指標は、ざっくり言えばその不動産の「年間純収益」を「投資金額」で割った数字になります。

 

たとえば5000万円の物件があったとして、年間純収益が500万円だとしたら、500万円÷5000万円=10%(=キャップレート)ということになります。つまり、不動産の収益力を示す指数と言い換えられますし、またこれで投資回収に何年必要かが把握できます。

 

キャップレートが10%の場合、100÷10(%)=10(年間)で投資回収できる(元が取れる)という計算になりますし、もしキャップレートが4%ならば、100÷4(%)=25(年間)で投資回収が可能です。

 

なお「年間“純”収益」というところにも注意しましょう。これは家賃収入から管理費用や固定資産税など諸コストを差し引いた金額です。さらにアパートローンで資金を借りているのであれば、そのローン金利も費用として差し引きます。

 

たとえば、対象となる不動産が5000万円として年間家賃が500万円であれば、不動産利回りは10%という表記がたびたび広告などで見られます。しかし実際には、ここから管理費用等で2%くらいが差し引かれ、さらにアパートローンの金利が3%だとしたら最終的には5%の利回りとなります(これは自己資金とローンの割合によって変わります)。

 

そして自己資金が少なく、アパートローンで不動産を買う場合に注意が必要なのは、キャッシュショート(資金不足)です。

 

上記の例、5000万円の不動産を全額アパートローンで買ったとして、年間家賃が500万として管理費用を抜いたら毎月33万円の家賃収入が得られたとします。

 

ここからアパートローンの元本と金利を払うことになり、5000万円を30年ローンとし、金利が3%の元利均等返済ならば、毎月の返済額は約21万円です。そうなると手取りは33万円―21万円ですので12万円となります。

 

ここで空室リスクを考えてみましょう。

 

年間家賃が500万円としたら、たとえば月10万円の家賃を4部屋というイメージをします(10万円×12=120万円、それが4部屋で480万円です)。

 

もし1部屋が空室となってもまだ手取りはプラスとなりますが、2部屋が空室となった瞬間に毎月のキャッシュがマイナスに転じます。

 

このようなかたちで、管理費用を考慮した利回り、そして毎月の手取りを考えに入れておく必要があります。このことは不動産投資を始める前にきちんと理解しておきましょう。

 

満室稼働しているアパートだから安心ですよ、という物件があったとしても要注意です。そこには誰が住んでいるのか、きちんと確認しましょう。販売するディベロッパーの関係者がサクラとして入居して、売却後に賃貸解約が相次ぐなんて話も聞いたことがありますから。

 

【KEY】
キャップレートが一つの参考指標になるが、極めてミクロな世界であり(不動産投資は)物件次第ということに尽きる。

 

塚口 直史

欧州系投資顧問会社プラスプラスグループ代表取締役/運用統括責任者

グローバルマクロ戦略ファンドマネージャー

 

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世界第3位のヘッジファンドマネージャーに日本の庶民でもできるお金の増やし方を訊いてみた

世界第3位のヘッジファンドマネージャーに日本の庶民でもできるお金の増やし方を訊いてみた

塚口 直史

朝日新聞出版

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