職業としての「教師の魅力」…給与面で見ると
――結局、上の人は現場をわかっていないんだよね。
そう話すのは、東京都のとある小学校教師です。都心近く、教育熱も高いエリアで教鞭をとっていますが、昨年は新型コロナ対応で例年以上に激務。感染予防で机や椅子などをこまめに拭きあげるなどの作業はすべて教師が行い、行事に関しても感染状況によって二転三転。保護者からの問い合わせ対応も、いつも以上に多く大変だったといいます。
――子どもたちの対応なら苦にならないけど、それ以外の業務が多すぎて、何のために教師になったのかわからないほど。
そんな状況のなかで始まった文部科学省による「#教師のバトン」プロジェクト。教員を目指す若者たちに仕事の魅力を伝えるため、教員たちにSNSでの発信を呼びかけたものですが、過酷な勤務環境を訴える声が相次いだのは報道の通り。長時間労働、休日返上の部活動……とても「教師は素晴らしい職業だ」などと、いまの若者には言えないというのです。
文部科学省が行った教員の働き方に関する調査では、1週間の時間外労働が20時間を超えた教員は、小学校で3割強、中学校で6割にものぼり、管理職では小・中学校ともに6割にものぼったといいます。時間外労働月80時間という過労死の水準を、多くの教師が超えているというのが現状です。さらに同調査はコロナ禍前のものなので、いまはさらに過酷な状況になっていることが予想されます。
このような苦しい環境でも、その対価として給与が高ければ納得がいくところもあるでしょう。
総務省『令和2年地方公務員給与の実態』によると、小・中学校の月額平均給与(平均給料+諸手当)は40万9003円。都道府県別に見ていくと、最も教員公務員の月額平均給与が高いのが「東京都」で44万1705円(平均年齢41.1歳)。続くのが「鹿児島県」で43万8745円(平均年齢46.2歳)。「福島県」43万4397円(46.7歳)、「岩手県」43万448円(平均年齢46.6歳)、「秋田県」42万9209円(平均年齢48.3歳)と続きます。最も月給の低い「石川県」で39万1159円(平均年齢43.0歳)です。
厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』によると、大学卒(男女計)の平均月給(きまって支給する現金給与額)は38万5800円(平均年齢40.9歳)。男性だけに限ると41万6800円(平均年齢42.7歳)。民間企業と教師の月給は同程度といえます。
教師をはじめ、公務員は退職金が高いといわれていますが、教育公務員の60歳定年退職者の場合、最も高い「三重県」で2318万6000円。最も低い「沖縄県」で2044万8000円。一方、厚生労働省の『就労条件総合調査』(平成30年)によると、退職事由が「定年」の退職者で比較すると、大学・大学院卒(管理・事務技術職)で1983万円。ここでも大きな差は見られません。違いがあるとすれば、民間企業の場合、退職金給付金(一時金・年金)制度がある企業は80.5%と、約2割は退職金がないということでしょうか。
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