交通事故は減少傾向も、高齢者による事故は増加
2019年4月、東京都豊島区東池袋。当時87歳だった男性が運転する車が暴走し、母子2人が死亡、10人が負傷した自動車死傷事故。加害者が元官僚で現行犯逮捕がされなかったことなどを受け、「上級国民」といった言葉も広まりました。先月27日に行われた公判はニュースでも大きく取り上げられ、事故の記憶はまだ鮮明なままです。
事故原因は運転手によるアクセルとブレーキの踏み間違いによるものと言われ、高齢者ドライバー問題への関心を、さらに高めるきっかけになりました。警視庁管区内で起こった交通事故に占める高齢者ドライバーの割合の推移をみていくと、2010年は12.7%でしたが、右肩上がりで増え続け、2019年には18.1%になりました。
■事故全体に占める高齢者ドライバーの事故割合
2010年 12.7%
2011年 13.4%
2012年 13.9%
2013年 15.1%
2014年 16.2%
2015年 16.9%
2016年 17.6%
2017年 17.9%
2018年 18.0%
2019年 18.1%
出所:警視庁資料より
一方で交通事故は減少傾向にあります。2001年と2019年の交通事故の増減率を都道府県別に見ていくと、地域によって大きなバラつきはあるものの、すべての都道府県で減少。増減の最も少なかった「宮崎県」でも2001年比89.2%。「沖縄県」79.7%、「群馬県」61.7%、「静岡県」59.2%、「福岡県」54.4%と続きます。
一方で最も減少したのが「和歌山県」で2001年比20.1%。2001年9228件から、2019年には1859件に減少しました。以下、「福井県」21.3%、、「新潟県」23.2%、「愛媛県」23.7%、「福島県」25.0%と続きます。
■都道府県「交通事故増減率*」トップ10
1位 和歌山県 20.1%
2位 福井県 21.3%
3位 新潟県 23.2%
4位 愛媛県 23.7%
5位 福島県 25.0%
6位 岡山県 25.2%
7位 石川県 25.3%
8位 鳥取県 25.4%
9位 京都府 26.5%
10位 島根県 27.5%
*2001年比
出所:警察庁資料より作成
自動車の性能向上により、死傷者の数も減っています。同じく2001年比、増減の最も少なかった「沖縄県」でも78.5%。最も減少した「和歌山県」で19.4%と、地域によって増減率に大きな幅はあるものの、交通事故による悲劇はこの20年で大きく減少しました。
このような背景から、より高齢者の事故が際立っているともいえます。高齢者による事故が増加傾向にあるのは、高齢化によってそもそも高齢者ドライバーの増えていることにあるので、当然といえば当然の結果と言えます。
一方で、人は加齢により動体視力や認知能力が低下し、情報の同時処理が苦手になったり、瞬時の判断力が低下したりと、身体機能の変化により、ハンドルやブレーキ操作に遅れが生じます。高速道路でたびたびニュースになる逆走は、瞬時の判断力、そして認知機能の低下によるもの。今後、重大事故を防止する観点からも、高齢者ドライバー問題は無視できないことと言えるでしょう。
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