不動産の取得・保有に関する税は、条件によって規定が大きく変化します。不動産の種類や取引の目的といった様々な要素から課税・非課税が決定されます。しかしその一方で、課税の条件が空き家問題を深刻にした側面もあるのです。※本記事は、『たのしく学べるファイナンシャルプランニング[改訂版]』(創成社、藤波大三郎著)より抜粋・再編集したものです。

固定資産税の仕組みが招いた「空き家の急増」問題

固定資産税と都市計画税は合わせて、固都税と呼ばれたりします。台帳課税主義が取られており、毎年、1月1日現在の固定資産税台帳に記載されている保有者に課税されます。ですから、その年に売却されると、その日までは売主負担、その日以降は買主が負担するため、売主に買主から対応する期間分の固定資産税、都市計画税相当額が支払われます。

 

税率は固定資産税が1.4%で、都市計画税が0.3%で合計1.7%となりますが、固定資産税は標準税率でこれを上回ることもあります。市町村が、財政上、必要と認めればこの税率以上を課すことができます。一方、都市計画税は制限税率でこれを上回ることはありません。

 

そして、住宅用地には軽減措置があり、200m2以下の部分は課税標準が6分の1になります。こうしたこともあって、一般の方々の住宅の固定資産税は大きく軽減されています。

 

しかし、この固定資産税の軽減措置は、わが国の空き家問題を助長しているという意見もあります。第2次大戦の終戦直後、全国で約420~450万戸もの住宅が不足し、住宅建設が進められた結果、1973年には全ての都道府県で住宅数が世帯数を上回りました。その後も住宅の建設は続けられ、その結果、日本の住宅総数の約14%は空き家となっており(2018年)、これは過去最高の水準です。

 

都道府県別では、1位は山梨県の約21%となっています。ドイツの空き家率が1%程度、英国は3~4%程度であり、日本の空き家の多さは国際的に見てきわめて高い水準にあるといえます。そして、このまま新築の住宅を作り続ければ2033年には空き家率は約30%になるという予測もあります。

 

資料:総務省統計局ホームページ。
[図表1]総住宅数,空き家数および空き家率の推移 資料:総務省統計局ホームページ。

 

これへの対策として、中古住宅の流通を高めることとともに、住宅の除去がいわれています。しかし、家屋を取り壊すと固定資産税の優遇がなくなるので、お金を出して取り壊すより空き家のままにしておいた方が得ということになります。そこで、自治体が危ないと判断した空き家は特定空き家として、住宅があっても税制上の優遇措置がなくなることになりました。また、相続した空き家を譲渡した場合、譲渡所得の金額から最高3,000万円を控除することができるようになっています。

 

放置された空き家は、治安の低下、犯罪の発生、防災機能の低下、地域イメージの悪化など、住民の生活環境に悪影響を及ぼすからです。しかし、一方で新築住宅の建設促進の税制は維持されていますので、全体として整合性がとれていないのではないかという意見もあります。


 

藤波 大三郎
中央大学商学部 兼任講師

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