日本人の約2800万人が発症している「腰痛」のうち、2~3%は「椎間板ヘルニア」だといわれています。しかしいざ病院を受診してみても、対処法が少なく、困っている人が多いのです。本連載では、現役医師である伊東信久氏が、「椎間板ヘルニア」の症状や治療法についてわかりやすく解説します。

腰痛の要因を「年のせい」にするのは、医者の怠慢

高齢の人ほど腰痛を年のせいにしており、「これから腰痛と上手に付き合っていきましょう」などと医者から言われます。確かに加齢は腰痛の一因ではありますが、若い人でもなっていることからも分かるとおり、さまざまな原因があります。

 

きちんと調べもしないで、年齢で判断するのは医者の怠慢というもの。はなから完治させる気がないから原因を究明せず、その場しのぎの言葉を使っているに過ぎません。

 

身体も何十年と使っていれば、腰に限らずあちこちにガタが出てきます。そのため、患者さんだけでなく、医者もなにかにつけて年のせいにしたがります。

 

先のデータでも分かるように慢性的な腰痛を抱えている人が多いゆえに、患者さんだけではなく医者でも腰痛を軽く見ているところがあり、痛み止めや湿布を処方して帰してしまいます。しかし、患者さんからしてみれば「年なのは自分でも分かっている。それでも痛くてつらいから受診したのに…。医者ならなんとかして!」という心境でしょう。

 

こうして医者に軽くあしらわれることが、実は患者さんの痛みを増幅させ、腰痛患者を増やし続けている要因の一つだと筆者は考えています。

 

ほとんどのケースにおいて、MRIなどの画像検査をすれば原因が見つかるのですから、きちんと調べてくれる医療機関にかかることが大事なことです。

坐骨神経痛は症状であって、原因ではないのだが…

坐骨神経とは、お尻にある坐骨を通る神経で、腰から太ももの裏を通ってふくらはぎまでつながっており、足のなかではいちばん太い神経のことをいいます。そのため、腰が痛くて足にもしびれが出ていると、坐骨神経痛と診断されるケースがなんと多いことか…。

 

そのように医者から診断されると、患者さんも腰痛の原因が分かったような気になって安心し、納得してしまうかもしれませんが、単に痛みの名前を教えてくれたに過ぎません。坐骨神経痛は症状であって、原因はほかにあるのです。

 

それにもかかわらず、どうして坐骨神経痛と診断されることが多いのかというと、これには現代の日本における医療システムが大きく影響しています。

 

医者は、患者さんを診断する際には、このままでは命に関わるとか、日常生活に支障が生じるということを判断基準にしています。そのため、手術の必要があるときは、病名を確定しなければなりませんから具体的な病名を付けます。

 

しかし、腰痛の場合は緊急を要するものではない限り、こうした手順が取られることが少ないのです。その結果、「年のせい」とか「坐骨神経痛です」と言って、温熱療法や牽引療法などの理学療法を行うように患者さんに勧めて通院させるようになります。医者からすると「これで常連の患者さんを1人ゲット!」というわけです。

 

こうして患者さんは通院するようになりますが、坐骨神経痛を根本的に治す治療をしているわけではないので、腰がラクになったり足のしびれが取れたりといったような満足のいく効果を得られません。

 

別の病院に移ったとしても結局、同じ診断をされて同じ治療を受けることとなり、途方に暮れた患者さんが病院に見切りをつけ、腕が良いと評判の整骨院やマッサージ店に駆け込むことが多く見られます。

 

これでは、患者さんにとって悪循環であり、いつになっても痛みは取れません。

 

では、坐骨神経痛の原因は何かというと、その多くは「椎間板ヘルニア」なのです。この病気はきちんと画像検査さえすれば診断可能な病名ですから、まずは検査を受けるようにすることが重要です。

 

そして、「年のせい」とか「坐骨神経痛です」という医者の言葉を信じないこと。この言葉に患者さんは妙に納得してしまいますが、医者が使う都合のよい魔法の言葉でしかないのです。

 

 

 

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椎間板ヘルニア治療のウソ・ホント

椎間板ヘルニア治療のウソ・ホント

伊東 信久

幻冬舎メディアコンサルティング

多くの現代人の悩みである腰痛・首痛。 その原因の一つである椎間板ヘルニアには、さまざまなウワサがあります。「手術しても完治しない」「安静にしていれば自然に治る」など…。 本書では、そんなウワサの真偽を椎間板…

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