現代日本人の約2800万人が発症している「腰痛」のうち、2~3%が「椎間板ヘルニア」だと言われています。しかし医師に相談しても、具体的な対処法がなかったり、一生治らないといわれたり、困っている腰痛患者が多いのではないでしょうか。今回では、現役医師である伊東信久氏が、椎間板ヘルニア治療における「保存的治療」と「外科的治療」について解説していきます。

保存的治療を「無駄に」勧める医者の真意

頸椎椎間板ヘルニアの治療はリスクが高いため、医師は保存的治療でしのごうとする場合が多くあります。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

もし保存的治療を選択された場合、決して医者の指示に黙って従い続けるのではなく、

 

「その治療は根治が見込めますか?」

「その治療法はいつまで続けるのですか?」

 

といった質問をどんどん医師に投げ掛け、治療方針をいつまで継続するのか、明確に期限を設けるようにしてください。こうした態度を取ることで、医者はいつまでも同じような治療を行うことができなくなります。

 

病院での治療は回数が重なれば重なるほど、それにかかる費用も膨れ上がっていきます。それを避けるためにも、医者のほうから「これだけの期間、保存的治療を行います。それにかかる費用はこちらです」といった見積もりを立てるのが、当然のことではないでしょうか。

 

また、保存的治療に見積もりを求めたり、期限を設けたりすれば、増え続ける日本の医療費を抑えることにもつながります。医療は、「社会保障制度」の名のもとで守られていますが、もとを正せば、医療も経済活動の一つに過ぎません。なおも高齢化が急伸し続ける現代において、医療費の無駄遣いは可及的速やかに解決しなければならない喫緊の問題です。

 

「売り手」である医者は、より良いサービスの提供を目指すべきであり、「買い手」である患者さんは、自身がかかるべき医者を取捨選択する目を養う必要があるのです。

椎間板ヘルニアの治療には、高い技術と経験が必要

どんな病気にも「診療ガイドライン」というものがあります。医療現場において適切な診断と治療を補助する目的で編集されたもので、病気の予防・診断・治療・予後予測など、診療の根拠や手順についての最新情報がまとめられています。これにより国内の診療方法は統一されている反面、マニュアルどおりの治療になりがちでさまざまな工夫を凝らし挑戦する積極的な治療がやりづらくなっています。

 

診療ガイドラインに沿って治療を行っていれば、たとえ患者さんの身体にトラブルが生じたとしても、医者の責任は問われません。つまり、医者にとっては自分の身を守るための大事なマニュアルというわけです。

 

頸椎椎間板ヘルニアを発症する首には、気道や食道、血管、神経と重要な器官が特に集まっているため、それらを上手に避けながら治療を行うには、医者の高い技術と経験が求められます。

 

しかも、治療において大がかりな手術をすることになると、手術後の患者さんは絶対安静。その後も、何カ月かリハビリをしなければなりません。それでも完治するという確信はもてないのです。このような状況から、リスクの高い頸椎の手術をはじめとする治療を医者は敬遠しがちなのです。

 

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椎間板ヘルニア治療のウソ・ホント

椎間板ヘルニア治療のウソ・ホント

伊東 信久

幻冬舎メディアコンサルティング

多くの現代人の悩みである腰痛・首痛。 その原因の一つである椎間板ヘルニアには、さまざまなウワサがあります。「手術しても完治しない」「安静にしていれば自然に治る」など…。 本書では、そんなウワサの真偽を椎間板…

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