「自主建て替え」せざるを得ないマンションとは
制度の適用で容積率が以前の約260%から約560%に増え、戸数を大幅に増やすことが可能になった。もともと法定容積率は360%だったため、東京都の制度を適用しなくても戸数を増やすことは可能だったが、それでは保留床が少なく、建て替え費用を賄うには不十分だったため、新しい制度を活用した。
建て替え事業には鹿島建設が参加したが、都心の好立地であったことがデベロッパーからの事業協力が得られる重要なポイントになった。
このように容積率が大幅に割り増しされれば、建て替えを行いやすくなるマンションは少なからず存在すると考えられるが、保留床を設けてそれを新たに分譲できるのは、やはりよほど立地条件が良いマンションに限られる。
分譲の際には、新規供給マンションとの販売競争にも打ち勝たなければならない。立地条件の悪いマンションは、いくら容積率を割り増して保留床を増やしても、確実に分譲できるという見通しが立たなければ、現実には建て替え困難なケースが多いことは容易に想像がつく。
この場合は、自主建て替えか、デベロッパーの協力が得られても低い元率を甘受して建て替えを行うという選択しか残されていないことになる。
米山 秀隆
大阪経済法科大学経済学部教授
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