前回は、経営者が「財務諸表」を正しく読めることの重要性を説明しました。今回は、財務3表の基本的な知識および、銀行側の重視するポイントについて見ていきます。

損益計算書は「7項目」に区分して表示される

今回は、財務3表の基本的な知識および、銀行側の重視するポイントを順に説明していこう。

 

まず、損益計算書(PL)は、どのように売り上げから利益を出しているのかを表す。会社法が定める「会社計算規則」では、次の7項目に区分して表示しなければならないことになっており、各項目はさらに細分化されることもある。

 

①売上高・・・会社の本業(営業)によって得た収益

 

②売上原価・・・売り上げを生み出すために直接かかった経費

 

③販売費及び一般管理費・・・売り上げを生み出すためにかかった費用のうち売上原価に含まれない人件費や事務所費用など(略して「販管費」と呼ぶ)

 

④営業外収益・・・本業以外の受取利息、配当金など経常的な収益

 

⑤営業外費用・・・営業外収益のためにかかった経費

 

⑥特別利益・・・固定資産売却益など非経常的な収益

 

⑦特別損失・・・災害損失など非経常的な損失

 

PLは、大きく3段階で利益を捉える。第1段階は、会社の本業(営業)でどれだけ利益(収益)が出ているかだ。

 

具体的には、①売上高から原材料費や商品の仕入れ代金など②を差し引いて計算する。これが「売上総利益」だ。粗あら利りともいう。また、本業(営業)に直接関わらない人件費や事務所費用など③についても考慮する。売上総利益から③を差し引いたものが「営業利益」となり、本業で稼ぐ力を示す。

 

第2段階は、本業(営業)以外の財務活動などで会社が得ている収益と費用を加える。預貯金の受取利息や株式の配当金などだ。これら④と⑤を加味したものが「経常利益」となり、企業全体としての稼ぐ力を表す。

 

第3段階として、さらにその期に突発的に発生した⑥利益と⑦損失を加味し、「税引き前当期純利益」となる。

 

最後に、税引き前当期純利益から法人税などの税金を差し引いたものが「当期純利益」となる。ただ、会社にフリー・キャッシュフローとして残るのは、この「当期純利益」より通常は多くなる。それは、減価償却費があるからだ。

 

減価償却費とは、建物や機械設備など一定額以上の固定資産を取得した場合、複数年にわたって経費として計上するものだ。

 

減価償却費は、②の売上原価や③の販売費及び一般管理費の中に含まれるが、実際には現金の支払いを伴わない(設備機器などの購入時に一括して支払っている場合)。したがって、フリー・キャッシュフローは通常、当期純利益と減価償却費を合計したものになる。

銀行員は「利益の中身」をチェックする

損益計算書では、売り上げと利益がどれくらい伸びているかに注目しがちだが、実際には売り上げが伸びて利益が出ていても、資金繰りが行き詰まって倒産することもある。いわゆる黒字倒産だ。

 

銀行ではそこで、損益計算書を次のようにチェックする。そもそも、営業利益が赤字の場合、本業で稼ぐ力がないということだ。今後業績を回復させ、黒字にするプランを説明できるかどうかが重要だ。

 

②の売上原価や③の販管費で注意しなければならないのが、減価償却費だ。減価償却費は税法上の特例がいろいろあったりして計算が複雑であり、適正に計上されていないことが結構ある。その影響で営業利益や経常利益が黒字になっている場合、その黒字はむしろマイナスの評価になりやすい。

 

そのほか、本業以外の保険の解約金や不動産の売却益など特別利益は、一過性の利益であり、その分で最終利益が黒字になっていても評価されない。ただし、不動産賃貸収入などの定期的な収入であれば、営業外収益として考慮される。

本連載は、2016年3月2日刊行の書籍『赤字会社を完全復活させる 逆転の融資交渉術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

赤字会社を完全復活させる 逆転の融資交渉術

赤字会社を完全復活させる 逆転の融資交渉術

久松 潤一

幻冬舎メディアコンサルティング

苦しい経営を続ける中小企業も依然として多い中、企業にトドメを刺すのは資金供給のストップ、すなわち銀行の融資がおりなくなることです。バブル期のように、銀行が「借りてください」と頭を下げるような状況が再び訪れること…

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