医師の平均年収は1200万円と、高収入であることは疑いようもありません。とはいえ、稼ぐほど所得税が重くなっていくのが日本の実情。世間にいくら「稼いでいる」と言われても、貯蓄だけでは安泰の老後を迎えることはできません。だからこそ、多忙でも着実に行えて、医師ならではの優位性がある「不動産投資」が着目されているわけです。ここでは、不動産投資に適した「有望エリア」を見ていきます。

安定収益だが…「都市物件」はどうしても低利回り

不動産投資をはじめるにあたり、まずは賃貸運用にふさわしい物件を購入することになります。では、どのような物件を選べば良いのでしょう?

 

①多方面にアクセス可能な鉄道路線の駅が徒歩圏にある。

②商業・教育・医療施設が近隣に揃っている。

③周辺相場と同等、または高めの家賃が取れて利回りも高い。

④築年数にかかわらず建物管理が行き届いている。

⑤間取りや付帯設備が入居者ニーズに合っている。

 

これら5つの条件がすべて揃っている物件はなかなか見つけられませんが、都市部であれば3~4つ揃っている物件はざらにあります。

 

条件の良い物件には自然と入居者が集まりますし、空室状態が長く続く心配もありません。すなわち、都市部にある投資物件を購入すれば、安定収益のチャンスが得られるということです。

 

そのため、多くの不動産投資家は都市部の物件を狙っており、結果として有望物件の争奪戦となります。まるでオークションのように物件価格は高騰し、価格が上がった分、利回りも下がってしまいます。

 

「空き家問題」が取り沙汰される昨今、日本はまさに「家余り」の状態にあります。その原因は、死亡数が出生数を上回るための人口減少だけでなく、都市部への人口一極集中にもあります。地方都市では過疎化が進行しており、「限界集落」と呼ばれる地域も増えはじめています。

 

だからといって、地方都市における不動産投資の可能性がゼロかといえば、そうではありません。むしろ地方都市にこそ不動産投資のポテンシャルが眠っているのです。

 

住宅ニーズが高いのは?統計データでわかる有望エリア

地域や年代によって、人口の増減率には大きな違いがあります。人が移動すれば、当然その先の地域には住宅ニーズが生じることになります。つまり、どの世代が流入しているかを知ることで、住宅の広さや分譲・賃貸の種別などのニーズについても推察することができるのです。

 

人口減少で「家余り」の状態とはいってもまだまだ住宅の需要はあるということを、総務省「住民基本台帳」の調査結果から年代別に検証していきましょう。

 

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【20〜24歳】

この年代は進学や就職の時期であり、多くの人が移動します。流入先として最も多いのが東京で、神奈川、千葉、埼玉などの近郊の都市もぐっと増えます。そんな首都圏に、愛知、京都、大阪などの大都市圏が続いています。逆に人が流出しているのは青森県、岩手県、秋田県、島根県、長崎県、宮崎県、鹿児島県などで、東北・九州地方に集中していることがわかります。

 

【25〜29歳】

この年代で流入が増えているのは東京、神奈川、愛知です。就職にともなう転勤なども多く、関西なら京都や大阪、首都圏では埼玉、千葉などで減少に転じていることになります。

 

【30〜40歳】

この年齢は一般的に結婚や出産などの時期となり、人口の移動は少なくなります。そんな中でも流入が増えているのが大阪・京都のベッドタウンである滋賀県と、東京のベッドタウンである千葉県です。東京や大阪などへ通うのが容易で、比較的安く住宅が購入できることから流入が増えていると考えられます。

 

【50歳代】

50歳代を過ぎるとさらに人口の移動は少なくなります。ほとんどの人は移動を終え、あとは特定の地域に住み続ける人が多いのだと考えられます。

 

【60歳代】

東京都は60歳代で流出傾向となります。定年退職後に大都会を離れて自然の中でのんびり生活したいというニーズがあるのかもしれません。

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人口動態に伴ってマンション・住宅に対するニーズは大きく変化します。少子化で子どもの数は減少していますが、人口の流出入を都道府県別に見ると、若者世代や住宅購入世代が多く流入している地域もあります。

 

当然のことながら、流入が多い地域は住宅の需要も高くなります。各地域における居住者の実態を把握することから、潜在的な住宅ニーズを顕在化できることも少なくありません。このような統計データを読み解くことで、社会が今後どのように変化していくのかをある程度予測することも可能になります。

人が集まる人気の街でも「供給過剰」は命取り

人口動態に加えて、注目しておきたいのが不動産の需給バランスです。投資用不動産を所有するなら、たとえば東京など人口動態から見て人が多く集まる街に持ちたいと考えるのは当然のことです。

 

人が多く集まる街なら、家賃収入を得るうえで最大のリスクである空室を避けやすくなります。ところが、それは不動産投資を考えている人なら誰でも考えます。つまり、人が集まりやすい人気の街には、それだけ不動産が多いということです。

 

ビジネスの拠点であり、観光地としても人気、しかも歓楽街もある地域。「ここで賃貸運用をすれば儲かるはず」と不動産投資家は考えます。投資家が注目しているとわかれば、ディベロッパーはその地域にどんどんマンションやアパートを建てます。

 

その結果、投資物件が供給過剰となり、家賃を下げても入居者が決まらない賃貸住宅が溢れてしまうことになります。「利益が出ないから」といって売ろうにも、家賃が安くて利回りの悪い物件は誰も買いません。地方都市での不動産投資の難しさは、こんなところにあります。

 

前出の住民基本台帳の調査結果から、30〜40歳のファミリーが多く流入している滋賀県に注目すべきと考えます。滋賀県はここ数年、東京・神奈川・愛知・福岡などの大都市と並んで人口増加が続いている有望株です。

 

とくに県庁所在地の大津市は京都・大阪方面への交通アクセスが良好で家賃相場も安いことから、京都・大阪へ通勤するサラリーマン家族の流入が増えています。ちなみに、大津市の中古マンション(築10年前後・70m²台)の価格相場は坪単価130~140万円、グロス価格3000万円前後です。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

<まとめ>

地方都市の投資物件購入を検討する際は、一度現地へ赴いてみることをおすすめします。

 

最寄り駅の駅前に賑わいはあるか、どんな店舗があるか、街を闊歩する人は若者か、親子連れか、老人かなど、物件の周辺情報を実際に見て肌で感じることも重要です。

 

インターネットの情報や現地不動産業者の情報だけで判断してはいけません。安い買い物ではありませんし、長く所有するものですから、そのポテンシャルを慎重に吟味しましょう。

 

大山 一也

 

 

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