中国社債市場に不安の種

中国国家統計局が4月16日に発表した21年1-3月期のGDP(国内総生産)は実質で前年同期比18.3%増加しました。新型コロナウイルスの早期収束を支えに四半期の成長率として記録がある92年以降で最大の伸びとなり、マクロ経済の堅調さが示されました。一方、中国社債市場では国有会社が発行した社債に不安定な動きが見られました。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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中国社債市場:資産管理会社が期限に決算を発表できず、当該社債は急落

中国国有の大手資産管理会社(不良債権受け皿会社)である中国華融資産管理(華融)の財務状況を巡り市場で懸念が高まりました。同社に関連する社債価格は、特に満期までの期間が長い社債は急落しています(図表1参照)。

 

 日次、期間:2020年4月15日~2021年4月15日、ドル建社債 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]中国資産管理会社の主な社債価格の推移日次、期間:2020年4月15日~2021年4月15日、ドル建社債
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

華融の社債価格が4月に急落した背景は、20年の決算発表期限である3月末に公表が間に合わなかったためです。報道では同社の財務再編計画が発表遅延の理由と報じられています。なお、同社の株式は香港株式市場で4月1日から売買停止となっています。

 

なお、大手格付け会社は華融が20年の決算発表を延期したのを受け、同社の格付けを格下げ方向で見直すことを検討すると相次いで表明しています。

どこに注目すべきか:中国資産管理会社、決算、社債、暗黙の保証

中国国家統計局が4月16日に発表した21年1-3月期のGDP(国内総生産)は実質で前年同期比18.3%増加しました。新型コロナウイルスの早期収束を支えに四半期の成長率として記録がある92年以降で最大の伸びとなり、マクロ経済の堅調さが示されました。一方、中国社債市場では国有会社が発行した社債に不安定な動きが見られました。

 

まず、中国の資産管理会社(AMC)について簡単に振り返ります。90年代末に不良債権処理を目的に、中国政府は4大国有銀行(中国銀行、中国農業銀行、中国工商銀行、中国建設銀行)それぞれに資産管理会社(東方、長城、華融、信達)4社を設立しました。

 

AMCは不良債権処理のための組織として不良債権を受け入れる一方で、中国人民銀行の融資や債券発行による資金を元手に回収してきました。AMCはその使命から、当初は存続が10年とされていましたが、その役割を商業的民間金融へ転換、発展させました。AMC4社は株式会社となり、華融、信達は香港市場に上場しています(図表2参照)。

 

日次、期間:2020年4月15日~2021年4月15日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]中国信達資産管理会社の株価の推移 日次、期間:2020年4月15日~2021年4月15日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

華融が20年の決算発表を延期する理由は「関連取引」が完了しなかったからと説明しています。ただ関連取引が何なのかは不明で、格下げを検討する格付会社も関連取引などについて、今は次の情報を待っている状況です。

 

市場の現状を見ると、華融社債でも償還が目前(4月27日)の社債は返済されるとの報道もありやや落ち着いています。また、同じ資産管理会社の信達資産管理会社の株価も比較的落ち着いており、波及は今のところ限定的です(図表2参照)。

 

一方、華融の長期社債(株式は取引停止中)の価格の動きに不安定さが見られます。華融は国有会社で、3大格付け会社が投資適格(BBB格以上)としていたことから、今まで安心と思っていた同社への投資に急速に不安が高まったからです。

 

不安の背景は暗黙の保証への懸念と思われます。中国本土の社債市場には中国当局が経営権を握る企業の社債は救済されるという考え方(信仰?)が見られます。ただ、華融社債の条項(例えばキープウェル条項)が本当に守り神となるのか、改めて不安が高まっているようです。また、万一、債務再編となれば損失負担などの前例が乏しいだけに投資家の不安が先立つ構図であることも浮き彫りとなっているようです。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中国社債市場に不安の種』を参照)。

 

(2021年4月16日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

 

 

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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