ロシア中銀が直面する内憂外患

世界有数の資源国であるロシアの通貨ルーブルは原油価格などと連動する傾向がありました。過去形としたのは、最近の原油などエネルギー価格の上昇がルーブルの追い風となっていないからです。その背景は、ロシアの景気回復が鈍いという国内問題から、西側の制裁など国外からの問題が山積しているからです。政策当局の苦しい選択が続くものと思われます。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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ロシア中央銀行:消費が伸び悩む中でも、インフレ懸念で市場は利上げを予想

ロシア中央銀行は2021年4月23日に金融政策決定会合の開催を予定しています。市場では23日の会合で主要政策金利を0.25%引き上げ、年4.75%にすることが予想されています。なお、前回3月19日の会合で、ロシア中銀は2年3ヵ月ぶりの利上げを実施しました(図表1参照)。

 

日次、期間:2020年4月20日~2021年4月20日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ロシアルーブル(対ドル)と政策金利、国債利回り推移 日次、期間:2020年4月20日~2021年4月20日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

ロシア連邦統計局が2021年4月20日に発表した3月の小売売上高は前年同月比でマイナス3.4%と減少し、市場予想(マイナス1.9%)、前月(マイナス1.5%)を下回る結果となりました(図表2参照)。

 

月次、期間:2014年3月~2021年3月、前年同月比 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]ロシアのインフレ率(CPI)と小売売上高の推移 月次、期間:2014年3月~2021年3月、前年同月比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:資源国、物価懸念、国債購入制限、利上げ

世界有数の資源国であるロシアの通貨ルーブルは原油価格などと連動する傾向がありました。過去形としたのは、最近の原油などエネルギー価格の上昇がルーブルの追い風となっていないからです。その背景は、ロシアの景気回復が鈍いという国内問題から、西側の制裁など国外からの問題が山積しているからです。政策当局の苦しい選択が続くものと思われます。

 

ロシアのGDP(国内総生産)成長率は最新となる20年10-12月期で前年同期比マイナス1.8%と依然水面下です。なお、国際通貨基金(IMF)はロシアの21年の成長を3.8%と見込み、ロシア中銀も3~4%程度の成長を見込んでいますが、マイナスに沈んだ3月の小売売上を見る限り、回復の足取りは重そうです。

 

ロシアでは(他の新興国でも同様ですが)インフレ率が上昇すると消費が落ち込む傾向が見られます。14年から15年頃には消費者物価指数(CPI)上昇率が前年比で15%を超えた時期がありましたが、その当時の小売売上高は大幅に落ち込んでいます。他の時期においても、程度の差こそあれ同様の傾向が見られます。ロシア中銀が前回の会合で市場予想に反し利上げに舵を切った背景と見られます。

 

ロシアは新型コロナウイルスの自国製のワクチン(スプートニクⅤ)を開発したものの、感染収束には時間が必要と見られる中、西側からの制裁にも直面しています。米政府は4月15日に、新発ロシア国債の購入制限を含む新たな制裁を発表しました。米国はロシアのサイバー攻撃や選挙妨害を制裁の理由としています。もっとも、今回の措置は発行市場に限定され、流通市場での取引は可能なことから市場は今のところ落ち着きを取り戻しています。

 

ウクライナとの緊張の高まりも懸念されます。ロシアがウクライナ国境付近に軍を集結させているからです。背景はウクライナが米国バイデン政権に接近したことに対するロシアの威嚇行動と思われます。先にロシアのインフレ率が急上昇したことを述べましたが、ロシアがウクライナ領のクリミア半島を併合したことに対する西側の制裁が高インフレの背景でした。今回、威嚇行動に留まると見られますが注視は必要です。

 

ロシア中銀の政策運営はこれまで適切で、今回もインフレ懸念を優先して利上げを選択すると思われます。ただ、今後の運営では政治動向を念頭に慎重になると思われます。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ロシア中銀が直面する内憂外患』を参照)。

 

(2021年4月21日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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