ニュージーランド中銀の配慮はこれから

インフレ目標に沿って政策運営することが世界の主な中央銀行で一般的となっています。その先駆けと見られるのはニュージーランド(NZ)準備銀行(中央銀行)です。1990年(法制化は89年)に開始し、その後カナダ、英国、スウェーデンなどが相次いで導入しました。NZ中銀は2月に金融政策に住宅価格への配慮を含めるとしましたが、こちらの評価はこれからのようです。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

ニュージーランド準備銀行:金融政策は市場予想通り据え置き

ニュージーランド(NZ)準備銀行(中央銀行)は2021年4月14日、市場予想通り政策金利を過去最低の0.25%に据え置くと発表しました(図表1参照)。大規模資産購入プログラム(LSAP、1000億NZドル)、および貸出資金プログラム(FLP)を維持しました。

 

日次、時点:2019年4月15日~2021年4月15日(日本時間正午)
[図表1]ニュージーランド政策金利とNZドル(対米ドル)の推移 日次、時点:2019年4月15日~2021年4月15日(日本時間正午)

 

NZ中銀は声明でインフレ率について、原油価格の上昇や世界的なサプライチェーン(供給網)断絶などで短期的に物価が上昇する圧力はあるが、中期的にみると金融(緩和による景気)刺激策がなければ、物価上昇率と雇用は政策目標を下回るだろうとの見方を示しました。そのうえで必要ならば利下げする準備があると述べています。

どこに注目すべきか:インフレ目標、NZドル、住宅価格、利上げ

インフレ目標に沿って政策運営することが世界の主な中央銀行で一般的となっています。その先駆けと見られるのはニュージーランド(NZ)準備銀行(中央銀行)です。1990年(法制化は89年)に開始し、その後カナダ、英国、スウェーデンなどが相次いで導入しました。NZ中銀は2月に金融政策に住宅価格への配慮を含めるとしましたが、こちらの評価はこれからのようです。

 

まず、伝統的(?)な視点で今回のNZ中銀の決定を受けた市場の反応を見ると、想定されたほど金融緩和姿勢を示さなかったことからNZドルは上昇しました(図表1参照)。新型コロナウイルスの感染収束が早かったNZは収束後に景気が急回復しましたが、その後勢いが落ちています。NZ中銀は必要ならば利下げをする準備があると繰り返していますが、今回の声明や、議事要旨では金融緩和の具体性に乏しい印象です。

 

一方で、NZの新型コロナ新規感染者数は日によっては一桁で推移しています。NZドルが堅調に推移する要因は残されていると思われます。

 

ただし、NZドルは3月に上昇の勢いを失っています。このひとつの背景として考えられるのがNZ政府の住宅価格上昇への対応策の公表が考えられます。具体的には住宅購入にかかわる投資家(一般の居住者と区別)向けの税制優遇措置の廃止や、投資家が税を回避するために必要な住宅保有期間を従来の2倍となる10年に延長することや、住宅ローンの金利支払いを費用として家賃収入と相殺できないとすることなどが発表されました。

 

投機で過熱した住宅市場の抑制に努める一方、38億NZドルの新基金を設立し、住宅供給を拡大する方針も打ち出しました。2月にNZ中銀は住宅価格に配慮することを求められたことから、市場の一部で利上げが想定されNZドルを押し上げていたと見られます。政府の対応を見て、NZドル上昇の勢いが失われたと見られます(図表2参照)。

 

月次、時点:2000年3月~2021年3月、前年比、NZ不動産協会、中央値 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]ニュージーランドの住宅価格(変化率)の推移 月次、時点:2000年3月~2021年3月、前年比、NZ不動産協会、中央値
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

なお、NZ中銀は住宅価格に配慮する新たな枠組みでも、政策目標はこれまで通り中期的な物価安定および最大雇用の達成で変わらないと述べています。また、住宅価格の持続可能性に関する分析を5月(次回会合時の)金融政策報告に含めると発表しています。収入に占める返済額の割合を示す返済負担率などに対するNZ中銀検討結果なども示されると思われます。インフレ目標のように金融政策と整合性の取れた政策と異なり、住宅市場への配慮には課題が多そうです。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ニュージーランド中銀の配慮はこれから』を参照)。

 

(2021年4月15日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

 

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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