逮捕されたという10代の頃の経歴を理由に、婚約破棄を申し渡された29歳女性。婚約破棄は、正当な理由さえあれば違法とはみなされませんが、「逮捕」という理由は不当と認められるのでしょうか? 「嫌われるのでは…」と話さなかったことは責められるべきなのことでしょうか? 弁護士が解説します。※本連載は、三輪記子氏の著書『これだけは知っておきたい男女トラブル解消法』(海竜社)より一部を抜粋・再編集したものです。

「不当」だとして損害賠償が請求できる可能性は…

こういった裁判例の基準を参照し本件を見てみますと、あなたには過去に逮捕歴があるのみで、現在何かの罪を犯したとかそういうわけではなさそうです。

 

あなたの過去を持ちだして、現在のあなたを断罪することは「一度の誤りも許さない」というあまりに厳しい態度といえます。

 

そもそも刑事法自体にも執行猶予制度があったり、無期懲役や死刑になる犯罪はかなり限定されており、人生をやり直すことを前提に制度設計されています。

 

そうだとすると、今回の件で婚約破棄をしたとなったらその婚約破棄は不当なものとして損害賠償請求が認められると考えることができると思います。

 

ただし、婚約破棄が不当だとして損害賠償請求が認められたとしても、結婚を強制することはできません。

 

彼が婚約破棄を撤回するかどうかは彼の意思のみにかかっています。彼の意思を法により強制的に変えさせることだけは決してできません。

 

あなた自身の過去を話さなかったことは責められるべきではありませんし、自らの過去をすべて話さなければ結婚できないなどというルールもありません。あなたは生き直していらっしゃるのですから、それはとても立派なことだと思います。

 

しかし、あなたが自分の過去を話しても話さなくても、現在のあなたを受け止めて理解してくれる人が結婚相手にふさわしいのではないでしょうか…。

 

<まとめ>

●婚約解消の動機や方法等が公序良俗に反し、著しく不当性を帯びている場合は、婚約破棄は不当なものとして損害賠償請求が認められる。

 

●損害賠償請求が認められたとしても、婚約破棄を撤回させて、結婚を強制することはできない。

 

 

三輪 記子
弁護士(第一東京弁護士会)

 

 

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