「確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年このような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

条件つきで小規模企業共済は途中解約が可能

このように、節税効果だけで比較すると、iDeCoでも小規模企業共済でもほぼ変わりはありません。ただ、どちらか一方を選べといわれれば、私は小規模企業共済を選びます。じっさい、私自身が独立してからずっと加入しているのは小規模企業共済です。

 

その理由は、「いざというときの対応力」の違いにあります。

 

iDeCoは原則として途中解約をすることができません。早くとも60歳になるまでは積み立てた掛金が戻ってくることがないのです。

 

一方、小規模企業共済の場合、途中解約が可能です。この場合、加入期間が246か月以上に達していれば、最高で掛金総額の120%が解約手当金として戻ってきます。

 

とはいえ、246か月というと約20年ですから、長いと感じるかもしれません。246か月よりも短い期間で解約をすると、加入期間が短くなるほどに、戻ってくる解約手当金は少なくなるので、それは避けたいところです。

 

こうしたときに使えるのが、小規模企業共済の「貸付金制度」です。これは、積み立てた掛金に応じた限度額まで、貸付を受けられるというものです。銀行などから借り入れるよりも利率は低く、特別な審査もないので、速やかにお金を借りることができます。

 

こうして比較すると、小規模企業共済はひじょうに心強いと思いませんか? iDeCoと小規模企業共済は併用することもできるので、節税メリットを増やしたいのであれば両方に加入してもいいでしょう。
 

 

本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2021年3月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。

 

小林 義崇
フリーライター 元国税専門官

 

 

確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

小林 義崇

河出書房新社

クイズ形式で出題。ベスト・チョイスはどっちか? 青色申告or白色申告。開業届を出すor出さない。家族を雇うorパートを雇う。iDeCo or小規模企業共済。郵送で申告or e‐Tax。国税専門官として数多くの申告相談に携わった著者…

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