「業界衰退」と「ユーザーのきもの離れ」は別問題
しかし、きもの業界にそっぽを向いたユーザーの心が、きものそのものから離れたわけではありませんでした。きもの好きの方は、新型コロナウイルスの感染拡大が続き、自宅で過ごす時間が長くなっている現状でも、きものを愛用しています。
きものECサイト「バイセルオンライン」がサイト利用者を対象に実施した調査によれば、緊急事態宣言後にきものを着る頻度が増えた人は7パーセント、変わらないと答えた人は36パーセントもいました。外に出る機会は明らかに減っているはずですが、4割以上の人は以前と変わりなくきものを着ていることになります。
外出自粛が続いたことで多くの人はストレスを感じていたはずです。そうしたなかでも、きものユーザーは数少なくなったきものを着る機会に、大いにおしゃれを楽しんだのではないでしょうか。また、この調査では、特別定額給付金(特別給付金)の10万円できものを購入した人が3割以上いたことも分かります。
きものには、気持ちをウキウキさせる力が秘められています。お客さまに寄り添い、きものにまつわる面倒くささや不快さを解消すれば、再び、きものを着てくれる方は増えるのです。
きもの業界に限らず、ほかの業界でも同じことが起こり得ます。業界の衰退とユーザーの商品離れは必ずしも直結するものではありません。伝統産業ならなおさら、古くからその商品を大事に思ってくださっているお客さまがいらっしゃるはずです。もちろん、きものが日常着に戻ることはないと思いますが、いまのユーザーのニーズに応えていけば、いまより悪くなることはありません。きもの産業が下げ止まっているのがその証拠です。
筆者はきものがそんなに好きではないまま2代目を継いだのですが、それでも生まれたときからきものはそばにあり、筆者にとって家族のような存在でした。「好き」以前に「あって当たり前」の存在です。きものを過去の遺産のような古ぼけた存在にしたくない気持ちが湧き上がる一方でした。
髙橋 和江
有限会社たかはし代表
和装肌着製造メーカー「たかはしきもの工房」代表
きものナビゲーター
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