麻酔科医から在宅医へと転身した矢野博文氏は書籍『生きること 終うこと 寄り添うこと』のなかで、「最期までわが家で過ごしたい」という患者の願いを叶えるために、医師や家族ができることは何か解説しています。

間質性肺炎で通院中、食道がんが見つかった田中さん

間質性肺炎で病院に通っていた田中さんの胸部エックス線写真に腫瘤陰影が見つかったのは、ある年の夏でした。精査の結果、原発巣は食道がんで、それが肺に転移したものと診断されました。

 

しかし手術や化学療法の適応はなく、約一ヵ月間の放射線治療の後に退院しました。その後は小康状態でしたが、翌年の一月に食欲不振と嘔吐が出現して、再び病院を受診しました。

 

検査の結果、食道がんが大きくなり食道の内腔が狭くなっていることが判明しました。もうすでに固形物はその狭窄部を通過できず、田中さんは流動食しか食べられませんでした。

 

さらに三月には全身の倦怠感が増強し、呼吸苦も出現し、再検査を行いました。そして肺転移によると考えられる両側の胸水が認められました。しだいに通院もままならなくなり、三月初旬に当院の訪問診療が開始されました。

お孫さんの結婚式は二ヵ月後…田中さんが出席するには

著者が勤務するクリニックの朝は、自宅療養にかかわる多くの職種が全員参加するモーニングカンファレンスで始まります。医師、看護師、リハビリテーション職員(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)、薬剤師、ケアマネジャー、ヘルパー、管理栄養士、鍼灸マッサージ師、医療ソーシャルワーカー、事務員、などが一堂に会します。

 

田中さんもこのカンファレンスで全員に紹介されました。職員それぞれが自分の職種として何かできることはないか……と聞き入っています。ひととおり田中さんの病歴が紹介され、家族の話題に移りました。

 

そして約二ヵ月後の五月初旬に、お孫さんの結婚式があることが告げられました。当然田中さんも出席したいはず……。しかし、あと二ヵ月もある……。その場には重い空気が流れていました。

 

二日後に結婚式があるというのであれば、職員全員がそのサポートの具体策を考えはじめたでしょうが、二ヵ月という時間は田中さんにとっては高いハードルであるように思われました。

 

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    本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『生きること 終うこと 寄り添うこと』より一部を抜粋したものです。最新の税制・法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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    幻冬舎メディアコンサルティング

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