医師という職業に対する安定志向の高まり、私大医学部の学費値下げ(東京女子医科大学など、現時点では数校値上がりしている大学がある)などもあり、近年、医学部人気が高まっているという。従来からの医師家庭や富裕層にサラリーマン家庭が続々参戦し、全国の82医学部入試の難易度が上昇している。では、どうすれば難関の医学部を突破できるのか。わが子の育て方、接し方から入試対策までを明らかにする。本連載は小林公夫著『わが子を医学部に入れる』(祥伝社新書)から一部を抜粋し、再編集したものです。

地方県立高校は1浪2浪も覚悟しておく必要が

東邦大医学部は定員110人のうち、東邦大東邦高校から現役13人、既卒3人が内部進学しています。また駒場東邦高校からは現役・既卒合わせて5人が内部進学しています(いずれも2014年度)。

 

また、日大医学部は定員120人のうち、8校の附属高校から合計18人(2014年度)が合格しています。

 

内部進学がもっとも確実なのは、川崎医科大附属高校から川崎医科大というルートでしょう。2014年度までの卒業者1601人のうち、川崎医科大への内部進学は1445人です。実に90.3%が内部進学している計算になります。川崎医科大附属高校は全寮制ということもあり、かかる費用は高額です。しかし、難度がさほど高くないうえに、90%以上が内部進学できるとあって、開業医を中心に高い人気を誇っています。

 

他にも、帝京大医学部、東海大医学部、近畿大医学部、福岡大医学部で附属高校からの内部進学が行なわれています。

 

中学や高校、あるいは小学校から私立に進学させられる経済的余裕があれば、附属高校から医学部への内部進学は、非常に有利な選択肢と言えるでしょう。ただし、その場合、子どもが中学や高校、あるいは小学校入学前から将来の医学部進学を考え始めなければ、受験に間に合わない可能性があります。子どもの将来について日頃からよく話をして、計画的に準備を進めることがここでのポイントとなります。

 

地方高校から、医学部へ(一般入試)

 

医学部を受験する大多数は、一般入試を受験します。国公立大の一般入試は、一次試験と二次試験の二つの試験が行なわれます。

 

一次試験とはご存じのようにセンター試験のことで、一月に2日間にわたり全国いっせいに行なわれます。ほとんどの医学部の受験者は、国語、地理歴史・公民(1科目)、数学(2科目)、理科(2科目)、外国語(1科目)の5教科7科目を受ける必要があります。

 

二次試験とは大学が個別に行なう試験で、二月下旬に行なうものを前期日程試験、三月中旬に行なうものを後期日程試験と言います。受験生は2回チャンスがあり、前期日程試験で不合格となった場合は、後期日程試験で同じ大学にリベンジできます。もちろん、他大学に再チャレンジするのもOKです。

 

ただ、後期日程試験を行なっていない大学も多くありますから、注意が必要です。また、山梨大医学部は後期日程試験しか実施していません。センター試験には失敗したが学力は高く、二次試験に自信があるような優秀な学生を集めようという意図があるのではないかと推測されます。

 

この一般入試を受けて合格するには、高校生活を犠牲にしなければならないような学習の広さと難しさが求められます。言わばセンター試験は幅広さ、二次試験は難しさです。この二つの壁を突破するには、地方の優秀な県立高校に入学してから将来の進路を医学部に定めていては遅いかもしれません。

 

前にも述べたように、中高一貫校に通う生徒たちは中学1年から受験に向かってスタートを切っています。こうした人たちと少ない席を争うのですから、県立高校の生徒は遅くとも1年からスタートダッシュしなければなりません。厳しいことを言えば、1年や2年の浪人も覚悟しておく必要があるでしょう。

 

小林 公夫
作家 医事法学者

 

 

わが子を医学部に入れる

わが子を医学部に入れる

小林 公夫

祥伝社

近年、医学部志願者が急増しています。その要因として、医師という職業に対する安定志向の高まり、私大医学部の学費値下げなどがあげられます。これにより、従来からの医師家庭や富裕層にサラリーマン家庭が参戦。全国の82医学…

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