衰退産業と呼ばれて久しい「きもの業界」。業界全体の売り上げが低下するなか、潜在的な顧客ニーズを察知することで、大ヒット商品が誕生しました。「不便で当たり前」「できなくて当たり前」と思われていたきものの特性にあえて課題解決を挑むことで、イノベーションが起きたのです。一体どういうことでしょうか。きもの業界に長く身を置く筆者が解説します。

高価なきものの「厄介な汚れ」をどうするか?

筆者の会社の最大ヒット商品である満点スリップのアイデアが浮かんだのは、たかはしの経営改革が一段落した1993年頃のことです。

 

きものは着ているうちに、どうしても汚れてしまいます。口紅やファンデーションなどの化粧品が付くこともありますし、会食などの場で飲み物や食べ物がはねるケースもあります。なかでもいちばんやっかいなのが、汗などの体液汚れです。

 

冠婚葬祭などかしこまった場できものを着る機会は多いでしょう。こうした場ではただでさえ緊張しますし、そのうえ、慣れないきものを着ていることもあって、普段より汗をかきがちです。また、日常生活のなかできものを着ている方も、暖房の効き過ぎた店や部屋で汗をかくことがあると思います。さらに、卒業式や成人式できものを着る若い方や、更年期を迎えて月経不順に陥りがちな世代の女性にとっては、生理の経血も汚れの一因となり得ます。

 

こうした体液汚れは水分汚れに分類され、クリーニング溶剤では落ちません。水分汚れは水でなければ落ちないのです。そのため、技術力のある職人さんが手作業でしみ抜きをするのですが、脇汗じみなどを付けてしまうと、この費用が最低でも1万円はかかってしまいます。

きものオーナーが「密かに抱えていた悩み」の解決策

筆者自身が日頃からきものを着ていましたし、お客さまから体液汚れの悩みを相談される機会もたくさんあり、少しでも解決策はないかと思案しました。そこでいろいろな問屋を探し歩き、きものに汗が付くのを防ぐ肌着を探しました。そして見つけたのが、あるメーカーがつくっていた汗取り用肌着でした。

 

筆者が実際に使ってみたところ、この商品は決して悪くありませんでした。ある程度の吸汗性があり、きものに付く汗の量をかなり少なくできたため、店頭に並べて、汗じみのあるきものを持ち込んだお客さまにお勧めました。かなり販売したと思いますが、でも、すべてが完璧というわけにはいかなかったのです。かいた汗が許容量を超えると、結局はきものが汚れ、クリーニングに出さなければなりません。

 

また、使い勝手にも不満がありました。この汗取り用肌着は単体では使えず、上に和装スリップを着なくてはならないつくりだったのです。

 

筆者は「面倒くさがり屋」のため、汗取り用肌着と和装スリップを2枚重ねするのは、あまりに面倒だと感じました。それに汗じみが付く場所はほぼ決まった場所なのだから、そこだけ防水してはどうかと考えだしたら頭からそのことが離れなくなったのです。これらを1枚にまとめた製品があったらと考えたのが、商品開発のきっかけでした。

 

商品に多少の不満を感じても、そのまま受け入れて使い続ける方は、おおらかでまめなのでしょう。それは日常生活においては美点かもしれませんが、こと商品開発においては短所なのかもしれません。少なくても筆者はものぐさだからこそ、商品開発につながりました。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

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衰退産業でヒット商品を生み出す4つの法則

衰退産業でヒット商品を生み出す4つの法則

髙橋 和江

幻冬舎MC

旧態依然としたきもの業界で、赤字経営から脱却。年10%以上のペースで売り上げを伸ばしてきた社長が解説。 古い業界だからこそ風穴は開けられる! 市場縮小が進む業界の状況を打破し、東日本大震災に見舞われながらも、ひ…

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