私たちがいま生きているのは「文明化終焉の時代」
さて、「枢軸の時代」を通過してから、人類は「長い近代」に入るわけですが、これが人口や文明の爆発的発展につながるまでは、一旦、中世という時代を通過したのち、啓蒙主義革命と、その必然的結果としての産業革命を待たなくてはなりませんでした。
枢軸の時代において、すでに現在の私たちの精神の基底をなすものが準備されたとはいえ、テクノロジーによって実際に人々の物質的生活基盤が急速に整備されるまでには、ほぼ2000年の時間が必要だったということです。
一般に第一次産業革命のスタートは18世紀後半と考えられていますが、このタイミングから、人間がもつ問題解決能力は爆発的に増殖し、衣食住それぞれの物理環境の劇的改善という「文明化」が急速に進むことになり、その上昇カーブは20世紀後半に至るまで続きます。
しかしこの上昇カーブは、すでに見た通りさまざまな側面でその勾配をなだらかにしつつあり、以降は定常状態を前提とする「高原状態」に移行して「無限に続く幸福ないま」が循環する時代がやってくるのではないか、というのが私の仮説です。
これが、人類が向き合うことになる「2つ目の変曲点」です。
つまり私たちは、BCE5世紀の頃、「一つ目の変曲点」を通過してから、ほぼ2500年ぶりに、新しいモードに切り替える時期にきている、ということです。冒頭から記述してきた内容を受けてそれを表現すれば、私たちがいま生きているのは「文明化の終焉の時代」だということになります。
そして、おそらくは2020年に発生したグローバルなコロナによるパンデミックが、この高原状態への移行を急速に推し進めることになることでしょう。