全世界の人口成長率が減少し人口は天井へ達する
モノがあまねく行き渡った需要飽和社会において、GDPも労働生産性も「軟着陸」の様相を示しています。このような指摘に対しては、地球の人口がまだまだ伸長する以上、新たな需要は生まれるはずだという反論があるかもしれません。さて、どうなのでしょうか。
人口動態を確認してみましょう。日本の人口がすでに減少トレンドに入っていることはご存じの通りですが、ここではまず世界の人口から確認してみましょう。国連の最新のデータによれば(2019年7月2日発表)世界の人口は2019年の77億人から2030年の85億人(2019年比10%増)へ、さらに2050年には97億人(同26%)、2100年には109億人(同42%)へと増えることが予測されています。
このような数字を確認すれば「なんだ、これからも増え続けるんじゃないか」と思うかもしれませんが、ここで確認しておきたいのが「増加率」です。
図表1を見てください。
これは1750年から2100年までの人口およびその増加率の推移を表したチャートです。このグラフを見ると、人口が2100年に向けて少しずつカーブをなだらかにしながらも増加していく一方で、増加率のほうはすでに1960年代にピークを迎え、急激に低下しつつあることがわかります。
より正確に記述すれば、世界の人口増加率がピークを迎えたのは1967年のことです。そこから半世紀にわたり、人口増加率は低下の一途をたどっています。1960年代にピークを迎え、以来半世紀をかけて明確な低下トレンドにあるという点で、先進国のGDP成長率のグラフ(図表2)と瓜二つだということがおわかりいただけると思います。
ここにもまた18世紀から上昇を開始し、20世紀半ばにピークを迎えたのちに急速に減速していくという、急峻な山型カーブの相似形を確認することができます。言うまでもなく、経済の規模を確定する需要の総量は最終的には人口に左右されることになるわけですが、その人口の成長率はすでに50年前にピークを過ぎ、近い将来にはほとんど増加しない「定常状態」になると考えられているということです。