台湾オードリー・タンが語る「地球をぶっ壊してやろう」はない

こんな人材が日本にも欲しかった。オードリー・タン。2020年に全世界を襲った新型コロナウイルスの封じ込めに成功した台湾。その中心的な役割を担い、世界のメディアがいま、最も注目するデジタルテクノロジー界の異才が、コロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIとイノベーション、そして日本へのメッセージを語る。本連載はオードリー・タン著『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

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STEAM教育のサイエンスとテクノロジーの重要性

STEAM+D教育の根幹となるサイエンス(S)とテクノロジー(T)

 

デジタルの進展に従って、サイエンス(Science =科学)、テクノロジー(Technology =技術)、エンジニアリング(Engineering =工学)、アート(Art =芸術)、マスマティックス(Mathematics =数学)を統合的に学習する「STEAM」教育の重要性が言われています。さらに最近ではデザイン(Design)を加えて、「STEAM+D」と呼ばれる傾向にあります。

 

最初の二文字のSとT、つまりサイエンスとテクノロジーに関する教育の重要性は、以前から指摘されていました。これに科学技術の応用である工学(Engineering)と科学技術の根幹である数学(Mathematics)が加わりました。しかし、これら二つの教育はサイエンスとテクノロジーの延長線上にあります。そう考えると、単にこの二つをどう使うかを教えるだけでいいのかという声も出てくるでしょう。

 

世の中にはいろいろな人がいて、いろいろな意見があることに自然と気づいたという。
世の中にはいろいろな人がいて、いろいろな意見があることに自然と気づいたという。

結局のところ、サイエンスやテクノロジーをイノベート(革新)していくためには、創造性が不可欠なのです。その使用法をいくら教えても意味はありません。そのため、創造性を養うことにつながる芸術(Art)が追加されたのです。

 

しかし、「芸術を創造する」というとき、特定の目的のためだけに使われるとは限りません。芸術は時としてまったく目的なしに創造される場合もあります。何か目的を持って創造したものは「デザイン」と呼ばれるものです。そのため、さらにデザイン(Design)が加わるようになったのです。

 

それはあたかも、もともとは「レズビアン(lesbian)」と「ゲイ(gay)」から「LG」と呼ばれていたものに、それだけでは性的マイノリティを網羅していることにならないため、「バイセクシュアル(bisexual)」と「トランスジェンダー(transgender)」が追加されて「LGBT」と呼ぶようになったのと同じです。結果的に、さらなるマイノリティが加わり、現在では「LGBTQ」や「LGBTQIA」「LGBTQIA+」とも言われるようになりました。

 

とはいえ、「STEAM+D」教育といっても、根幹は科学と技術(SとT)にあります。教育が進めば進むほど、様々な分野のものを次々と取り込みたくなりますが、核心はサイエンスとテクノロジーにあるというのが私の意見です。その理由は、科学技術とは一つのコミュニティであり、自分の考えや実験を発表することをためらわない場所だからです。それはソーシャル・イノベーションの出発点となる場所であり、ここから社会は発展していくからです。

 

その意味では、より多くの人が科学者・技術者になることができるようにしていくことが大切で、そのためには「科学技術の分野をもっとオープンにしていく」ことが重要になります。

 

一般的に、科学者というと、一つの仕事あるいは職業というふうに考えますが、最近では一日のうちわずかな時間を割いて貢献するだけで「市民科学者」になることができることが少しずつ知られてきました。たとえば、大気や水質などの測定をしてネット上のプラットフォームにデータを送るだけでも、科学者の一員になることができます。

 

つまり、そうした行為を通じて、科学分野における仮説の形成あるいは仮説の検証、さらには発表といったものに参加しているのです。一日すべて使うわけにはいかなくても、誰もが同じ関心や願望を持つ人たちと一緒になって、科学という大きな仕事の一部分を担うことができるのです。

 

このような行為を通じてその人の貢献が知られるようになると、「より大きな貢献をしよう」というモチベーションにもつながります。そのために、科学のコミュニティの発展はオープンな方式を通じて、多くの人が「科学者とは何をしているのか」を理解するところから始まると思います。

台湾デジタル担当政務委員(閣僚)

1981年台湾台北市生まれ。幼い頃からコンピュータに興味を示し、15歳で中学校を中退、プログラマーとしてスタートアップ企業数社を設立。19歳のとき、シリコンバレーでソフトウエア会社を起業。2005年、プログラミング言語「Perl6(現Raku)」開発への貢献で世界から注目。同年、トランスジェンダーであることを公表し、女性への性別移行を開始する(現在は「無性別」)。2014年、米アップルでデジタル顧問に就任、Siriなど高レベルの人工知能プロジェクトに加わる。2016年10月より、蔡英文政権において、35歳の史上最年少で行政院(内閣)に入閣、無任所閣僚の政務委員(デジタル担当)に登用され、部門を超えて行政や政治のデジタル化を主導する役割を担っている。2020年新型コロナウイルス禍においてマスク在庫管理システムを構築、台湾での感染拡大防止に大きな貢献を果たす。

著者紹介

連載「政治を、経済を、未来を変える」デジタルとAIの未来を語ろう

オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る

オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る

オードリー・タン

プレジデント社

2020年に全世界を襲った新型コロナウイルス(COVID‐19)の封じ込めに、成功した台湾。その中心的な役割を担い、2020年新型コロナウイルス禍においてマスク在庫管理システムを構築、台湾での感染拡大防止に大きな貢献を果たす。…

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