「後継者」と「負債」の問題を抱える高野プラスチック
実例3◦赤字企業でも売却、内製化を目指す買受企業に魅力的な設備と技術力
プラスチック射出成型
資本金1000万円 売上高5億円 従業員数30名
譲渡価格:500万円、役員退職金:社長に500万円
高野プラスチック株式会社(仮名)は、創業から35年が経つ、自動車部品を主体とする小物のプラスチック部品の射出成型を営む中小製造業でした。売上高5億円、従業員30名と小規模ながら、老舗として幅広い取引先を持っていました。
しかし、問題が2つありました。まず創業者である高野社長がすでに80歳を迎えており、後継ぎ候補もいないために事業承継に赤信号が灯っていたことです。息子が1人いたのですが、以前後継者候補として社内に入れたものの、周囲とうまくいかず退社してしまっていました。
もう一つの問題は、会社が多額の負債を抱えていたことです。事業承継を後回しにしてでも負債を返そうと頑張ってはいたのですが、それが裏目に出てしまいます。寄る年波には勝てず、業績は低調のまま推移して、営業赤字基調になってしまいました。負債は増え続け、ついには4億円まで達してしまいます。
高野社長はこのままでは近いうちに倒産してしまうと日々焦っていました。
自分のことはどうにでもなると思っていましたが、今まで長年勤めてくれた従業員も多い中で、倒産は絶対に回避しなければならないと思っていたのです。
そこで、あるとき以前から事業承継対策をすべきだと指摘してくれていた顧問税理士を思い出し、相談することにしました。
「自社には関係ない」と思っていたM&Aだったが・・・
取り急ぎ、顧問税理士に今の状態で廃業した時のシミュレーションをしてもらったところ、会社の資産をすべて現金化しても、負債と諸費用によって借金が2億円弱は残るということがわかりました。
高野社長は、なんとなく何とかなると思い込んでいましたが、さすがにその額では個人資産をすべて投げ打っても返済できません。しかも自宅も銀行の担保に入っており、息子も連帯保証人となっています。
従業員の行く末どころか、自身の老後の生活も危うく、妻や子どもにまで迷惑をかけることになってしまいます。
どうすべきかわからず途方に暮れている高野社長に対して、顧問税理士が声をかけます。「M&Aを検討してみる手はあるかもしれません」
高野社長はM&Aなど自社に最も関係のない言葉だと思っていたので、その時にはほとんど何のことか意味がわかっていませんでした。ただ、この状況を打破できるならと、藁にも縋る思いでM&Aについて検討してみることにしたのです。その顧問税理士からの紹介で、私の事務所に相談に来てもらうことになりました。