このままマンションに永住したいと望むが…
そのような問題を抱えるマンションですが、永住意識は62.8%と、20年前の39.0%から増加。一方で住み替えを視野に入れている人は、20年前の31.5%から低下を続け、17.1%に。
ちなみにマンションを購入する際に考慮した項目の上位10つは以下の通り。生活環境を考慮した項目が並んでいることから、「永住したい」という思いが強くなっていく人が多いのもうなづけます。
第1位「駅からの距離など交通利便性」72.6%
第2位「間取り」63.7%
第3位「日常の買い物環境」52.8%
第4位「周辺の医療・福祉・教育等の公共公益施設の立地状況」39.4%
第5位「眺望」32.1%
第6位「周辺の自然環境」28.5%
第7位「建物の防犯性能」23.6%
第8位「建物の耐震性能」23.2%
第9位「専有部分の設備」20.6%
第10位「共用部分の維持管理状況」11.5%
一方で「住み替えを検討する理由」は何なのでしょうか。同調査で見ていくと、そもそも「住み替えの意向のまま変わらなかった」のは32.7%。さらに「共有部分の維持・管理に費用がかかるため」が20.8%と、5人に1人がコストを理由にしています。
ではいわゆるマンションの管理費はどれくらいなのかといえば、同調査によると、駐車場使用料等からの充当額を含む月/戸当たりの管理費の総額の平均で1万5956円で、マンションの形態別に見ていくと、単棟型のマンションでが1万6213円、団地型のマンションで1万4660円となっています。
たかが、1万5000円前後の管理……と思うでしょうが、年金暮らしの高齢者の場合は結構な金額です。
厚生労働省『令和3年度の年金額改定についてお知らせします』によると、令和3年度、国民年金(老齢基礎年金(満額))は、1人月額6万5075円、厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)は22万496円。ここに住居費として、マンションの管理費も含まれている前提です。
一方、総務省『家計調査 家計収支編2020年』によると、高齢者の二人以上世帯の平均的な消費支出は24万1724円。毎月、2万円程度、貯蓄の切り崩しが必要となるイメージです。
不足分は貯蓄から切り崩す年金生活世代。住み替えるにしてもそれだけの余裕があるとは限らず、住み続けても管理費がじわりじわりと負担になる、しかも老朽化したマンションは管理が行き届かず、生活環境は悪化する一方……。最悪の想定と言えるかもしれませんが、決して他人事とは言い切れないでしょう。