セルフメディケーション税制を使える条件
もうひとつ確認しておきたいのは、セルフメディケーション税制を使える人には条件が設けられているという点です。通常の医療費控除の場合、支払った医療費の金額条件さえ満たしていれば問題ないのですが、セルフメディケーション税制は違います。
具体的には、「健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人」という条件なのですが、簡単にいえば、会社で定期健康診断を受けていたり、インフルエンザの予防接種を受けていたりすれば大丈夫です。
では、通常の医療費控除とセルフメディケーション税制を使える場合、どちらを選ぶべきなのでしょうか。これはじっさいに計算してみるしかありません。
通常の医療費控除は基本的に年間10万円を超える支払いが必要ですが、セルフメディケーションは年間1万2000円を超えればOKです。
ただ、上限に関しては通常の医療費控除のほうが有利です。この上限額は200万円であるのに対し、セルフメディケーション税制の上限額は8万8000円と設定されています。
たとえば、1年間に医療費控除の対象になる費用と、セルフメディケーション税制の対象になる費用を、いずれも30万円負担したのであれば、医療費控除を使ったほうが節税効果が高く、おトクです。
まとめると、大きな病気やケガをせず、ドラッグストアだけで済んだ年はセルフメディケーション税制を使い、入院など多額の医療費がかかった年には通常の医療費控除を使うといった考えが合理的です。
本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2021年3月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。
小林 義崇
フリーライター 元国税専門官
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
