「確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年このような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

セルフメディケーション税制を使える条件

もうひとつ確認しておきたいのは、セルフメディケーション税制を使える人には条件が設けられているという点です。通常の医療費控除の場合、支払った医療費の金額条件さえ満たしていれば問題ないのですが、セルフメディケーション税制は違います。

 

具体的には、「健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人」という条件なのですが、簡単にいえば、会社で定期健康診断を受けていたり、インフルエンザの予防接種を受けていたりすれば大丈夫です。

 

では、通常の医療費控除とセルフメディケーション税制を使える場合、どちらを選ぶべきなのでしょうか。これはじっさいに計算してみるしかありません。

 

通常の医療費控除は基本的に年間10万円を超える支払いが必要ですが、セルフメディケーションは年間1万2000円を超えればOKです。

 

ただ、上限に関しては通常の医療費控除のほうが有利です。この上限額は200万円であるのに対し、セルフメディケーション税制の上限額は8万8000円と設定されています。

 

たとえば、1年間に医療費控除の対象になる費用と、セルフメディケーション税制の対象になる費用を、いずれも30万円負担したのであれば、医療費控除を使ったほうが節税効果が高く、おトクです。

 

まとめると、大きな病気やケガをせず、ドラッグストアだけで済んだ年はセルフメディケーション税制を使い、入院など多額の医療費がかかった年には通常の医療費控除を使うといった考えが合理的です。

 

本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2021年3月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。

 

小林 義崇
フリーライター 元国税専門官

 

 

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確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

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小林 義崇

河出書房新社

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