先進国でジリ貧なのは日本だけ…
ある国がまだ貧しく経済建設に邁進している間は、国中でお金がうなりをあげて高回転しているものだ。それはそうだろう。人々がより豊かな生活を目指して、生活必需品を次から次へと買い揃えようとする。それで、生産設備を拡大させようとする投資が爆発するのだから。
つまり、お金がすごい勢いで経済の現場をグルグルまわっているわけだ。誰かがお金をつかうことで、それが別の誰かの収入となる。その収入がなにかの購入につながっていくという循環で、お金がグルグルまわっていく。
これが経済活動であって、お金の回転が速くなればなるほど、経済成長は高まることになる。そして、お金が常に不足気味となるから、市中の金利は高くなる。発展途上国や新興国の金利水準が高いのは、それだけお金の需要つまり回転が高いからだ。
かつての日本もそうだった。戦後のガレキの山から、世界第二位の経済大国にまで駆け上がった。あの当時は、日本中でお金が超高速回転していた。そして金利水準も高かった。
ところが、この30年間というもの、日本経済はまったくのダラシなさをさらけ出し続けている。経済はジリ貧と低迷にあえぎ、国民の所得は一向に増えない。その間に、中国やインドなど新興国の経済は目覚ましい成長を遂げている。それは、かつての日本を思い起こせば、「さもありなん」と納得がいく。
ところが、驚くなかれ、米国やEUの経済も3倍前後に規模を拡大しているのだ。当然のことながら、米国やEUの国民所得も3倍前後に増えている。
おかしいと思わないか? 米国やEUであれだけ社会問題が騒がれているのだ。米国では社会的な格差の拡大だとか、EUでは高失業率が続いているとか、いろいろな問題を抱えている。なのに、どちらも経済は拡大成長を続けているのだ。
ひとり、日本だけが経済成長から取り残されている。つまり、世界からみると日本は相対的に貧しくなっているといっていい。実際、大都市のホテル代金を比べると、ニューヨークやロンドンはもちろん、香港やシンガポールはびっくりするほど高い。東京や京都、大阪の安さは際立っている。
どうして日本経済だけがこうもダラシないのか? その理由は簡単で、国民がお金をつかわなくなったからだ。かつて日本人みなが豊かな生活にあこがれた頃は、国民が次から次へと欲しかったモノを買い揃えていった。つまり、お金をじゃんじゃんつかったわけだ。それが日本経済の高度成長を示現させることになった。
国民が欲しかったモノをほとんど手に入れてしまうと、それまでのようにはお金をつかわなくなり経済成長率は一気に鈍る。それを経済の成熟化という。これは、どこの国でも高度成長期の後に必ず陥る悩みである。