高齢化、少子化、貧困、教育……日本にはさまざまな社会問題が山積しています。その解決法として注目されているのが「寄付」「遺贈寄付」であり、その文化を広めることが課題となっています。一方で寄付大国と称されるアメリカ。そこにどのような違いがあるのでしょうか。公益財団法人 お金をまわそう基金の代表理事、澤上篤人氏が解説します。

アメリカ…「寄付する人はする」の文化

しばしば米国は寄付大国で、それはキリスト教に由来するものだとかいわれる。だが、そうとも言い切れないのが、米国の寄付の現状である。

 

たしかに米国では、寄付するのを生活の一部として習慣化するよう、子どものうちから家庭で教育される。とはいえ、それは米国社会全般に共通の話というわけではない。米国でもある程度しっかりした家庭でこそ、叩き込まれるファミリー教育である。

 

米国は寄付大国というが、実態はそんなところである。米国人のすべてが寄付するわけでもなく、むしろ自分の贅沢に走ってやまない人たちのほうが多い。伝統的なアメリカンドリームも、たっぷり稼いで派手な生活を送りたいとする人たちの願望を、実に上手く表現している。

 

それでも、「寄付する人はする」し、その寄付も半端な金額ではない。それが米国の寄付の実情である。

 

ちなみに、よく寄付する人に尋ねてみよう、「あなたは、一体どのくらい寄付しますか」と。戻ってくる返答は、「これだけ寄付すると、ちょっとキツイと思うぐらいかな」とくる。

 

たとえば、手取りの給料が月16万円の人がいるとしよう。日本だと寄付にまわすとしても、せいぜい2,000円といったところが精一杯だろう。

 

ところが、米国では4万円近くを寄付してしまう人がゴロゴロしている。となると、その人たちは月12万円ほどで生活することになる。自分の贅沢は抑えてでも、寄付にまわして多くの人に喜んでもらいたいと考えるわけだ。凄いと思わないか。

 

この分かち合いの精神は、一体どこから来るのだろうか? それこそ、キリスト教に由来するものなのか? まさか、仏教でいうお布施の心が米国に伝わったものでもなかろう。

 

おそらく、一般的な教育とかを超えて、「社会生活を営んでいくうえで、そのファミリーが大事とする教育」といったものなんだろう。最近は米国社会の分断などとやたら騒がしいが、そういったファミリー教育をみるにつけ、良きアメリカの精神はまだまだ健全なんだと思えてくる。

 

 

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