増加する「医療的ケア」を必要とする子どもたち
近年の医療の進歩には目をみはるものがあります。それに伴い、誕生後、重い障がいを抱え保育器の中で一生懸命に命をつなげ、頑張る赤ちゃんが増えています。その頑張りに医療が寄り添い、敬い、一緒に試練を乗り越える……そして数週間、数ヵ月に及ぶ入院生活を経てお母さんの腕の中へ。
その後、自宅には当分帰れずに一般病棟で過ごさなくてはならない子どももいます。急性期を過ぎ、重い障がいを持った子は医療的ケア(通称=医ケア:痰の吸引や中心栄養静脈、人工呼吸器など)が手放せない場合が多く、退院後は自宅での家族によるケア、訪問医療・看護が始まります。
常時医療的ケアが必要な子どもは1万8千人を超え(平成28年時点)、今後も医療の発展とともに、年間1000人のペースで増加すると言われています。
障がいが重ければ重いほど、外出時や活動時にはたくさんの障壁が立ちはだかります。障害者差別解消法が施行され、合理的配慮が義務付けられても、やはりまだまだ理解は広がらず、バリアフリー化は十分ではありません。障がいのない人向けに作られた社会での生活は大変大きな困難を伴います。
コミュニケーションにおいても、意思の表出が難しい場合は、周りに理解を求めるのに相当なバリアがありますし、自己決定や選択に大きな支障をきたします。
さらに体調管理に欠かせないケアにかける時間も多く、在宅時間が長くなり、通学することが困難な場合があります。障がいのある子どもが通う特別支援学校には通学籍と訪問籍があります。さらに訪問籍には家庭訪問指導と施設等訪問指導があり、家庭訪問指導は重度・重複障がいのため通学が困難な児童・生徒が対象です。
訪問籍の場合、指導時間数は週に6時間が一般的で、健康状態によってはさらに学習時間が減ることもあります。通学籍であっても体調が不安定なために毎日通うことが困難な子どもも少なくありません。入退院を繰り返す子もたくさんいます。
家族は医療的ケアのために24時間つきっきりとなり、外出も十分な睡眠も確保できません。そのような家族のために、一定期間子どもが入所し家族が我が子のケアからひととき離れほっとできる時間を作るのを目的にした施設が全国に広がっています。
医ケア児(医療的ケアを要する小児)の存在認知が進み、社会は家族の負担に寄り添い様々な施策を充実させつつあります。重い障がいの子どもをめぐる社会は以前に比べ、随分と抱擁力を増してきたといえます。
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