賞品の価格は「競争」によって決定されますが、特定の企業に独占あるいは寡占されているケースでは、少々事情が異なります。とくに、数少ない企業によって「寡占状態」になっている場合、商品価格の決定には興味深いメカニズムが作用するのです。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

商品価格は「競争で決まる」のが大原則だが…

「賞品の価格は競争によって決まる」というのが経済の大原則です。消費者は安い店で買おうと行動するので、ほかの店よりも高い値段をつければ売れなくなってしまうため、売り手は値下げを余儀なくされることになるからです。

 

しかし、これには大きな例外があります。「独占」と「寡占」です。独占企業があり、それ以外にライバル企業がない場合は、独占企業は競争相手に客を奪われる心配がありませんから、気楽に値上げができるのです。

 

もっとも、ビールの独占企業が極端な値上げをすると「それなら日本酒を飲もう」という客が増えて売上数量が激減しかねませんから、なんでもかんでも自由に値上げができるというわけではありませんが…。

 

独占とは「独り占め」という意味ですが、寡占とは「少ない人数で占める」という意味です。たとえば、ビール会社がA社とB社の2社しかなかった場合を考えてみましょう。

 

ライバルが1社しかないのであれば、お互いに相手のことが気になるはずです。お互いが客を奪い合うために値下げ競争をするかも知れませんが、お互いが相談して「値上げしよう」という協定を結ぶかもしれません。そうした協定のことを「カルテル」と呼びます。

 

もしも両社の協定が絶対に守られるのであれば、それは独占と同じことになります。両社合計の利益が最大になるように販売数量を決め、その数量を売るための値段を求め、その値段でお互いが売ればいいのですから。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

しかし、世の中は複雑です。どちらかが約束を破るかもしれません。相手が約束通りの値段で売っているときに、こちらが約束より少し安い値段で売れば、顧客を独占できるので、大儲けできてしまいます。

 

A社が相手を裏切ろうとするならば、B社も同じことを考えるかもしれません。そうなると結局、両社とも値下げ合戦に突入してしまってカルテルが守られない、ということになりかねません。

 

両社がカルテルを守ったならAもBも大儲けでき、また、両社が約束を破ったら大儲けできなくなってしまうのに、なぜ「約束が守られない」ということが起こるのでしょうか? それはゲーム理論という分野の「囚人のジレンマ」という話で説明できます。表を使って解説していきましょう。

 

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