所得税ではなく贈与税、相続税になる場合も
一方、保険料負担者と保険金受取人が別人である場合は、税金の計算方法がまったく変わります。所得税ではなく贈与税、もしくは相続税の対象になってしまうのです。
たとえば、夫が保険料を負担していて、妻が保険金受取者になっているケースをイメージしてください。この生命保険が満期を迎えると、妻が満期保険金を受け取ることになります。じっさいに保険料を支払っていたのは夫ですから、実質的に夫から妻に財産贈与があったと判断されて、贈与税の対象になるのです。
同じ金額であっても、所得税になるか、贈与税になるのかで税額は大きく違います。まず、贈与税の場合、所得税の一時所得の場合とは違って、支払った保険料を必要経費として差し引くことができませんし、2分の1の計算もありません。しかも贈与税の税率は10〜55%ですから、所得税の税率5〜45%よりも高くなっています。
最後に、相続税の対象となるパターンについて解説しましょう。夫が自分自身を被保険者とする生命保険に加入し保険料を支払っていたようなケースで、夫が死亡して生命保険金を妻が受け取ったようなケースをイメージしてください。
相続税については、本連載ではくわしく解説しませんが、生命保険については、保険料負担者と保険金の受取人の関係しだいで、税の扱いが大きく変わることは覚えておいてください。相続税の場合、生命保険金が支払われる場合はもちろん、「生命保険金を受け取る権利」を引き継いだ場合も、課税の対象になります。
とくに保険金の受取者と、保険料の負担者が別人になるような場合、保険の契約をする前に、税金のこともあらかじめ考えておきたいところです。
本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2021年2月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。
小林 義崇
フリーライター 元国税専門官
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】