「孫が奨学金や学費の工面で苦しむ」…祖父母の立場からするとなんとかして避けたいことでしょう。本記事では、岡野雄志税理士事務所所長の岡野雄志氏が「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」について解説します。

孫思いの夫婦を震撼させた「老後2,000万円問題」

子どもを幼稚園から高校まで私立に通わせたとして、子ども1人にかかる教育費はいくらになるでしょう? 文部科学省『平成30年度 子供の学習費調査の結果について』によると、学校教育費、学校給食費、学校外活動費を含めた1年間の平均的な支出額は以下となります。

 

◎私立幼稚園 52万7,916円

◎私立小学校 159万8,691円

◎私立中学校 140万6,433円

◎私立高等学校(全日制) 96万9,911円

 

私立幼稚園に2年間通わせると、52万7,916円×2=105万5,832円。

私立小学校に6年間で、159万8,691円×6=959万2,146円。

私立中学校に3年間で、140万6,433円×3=421万9,299円。

私立高校に3年間で、96万9,911円×3=290万9,733円。

 

大学入学前に、高校卒業までで1,777万7,010円の教育費をすでに支出している計算になります。

 

さらに、大学へ進学させるとなると、どうなるでしょう? 文部科学省の『令和元年度  私立大学等入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について』によると、私立大学等の昼間部における初年度学生納付金(平均額)は以下の通りです。

 

私立大学等の昼間部における初年度学生納付金(平均額)
私立大学等の昼間部における初年度学生納付金(平均額)

 

また、近頃では、奨学金が「将来の借金」と呼ばれ、社会問題化しています。日本の奨学金制度には給付型と貸与型の2種類があり、貸与型の場合、卒業後に返済義務が生じます。長引く不況下、この奨学金の返済に苦しむ若者の姿が、テレビやネットでも報じられています。

 

Jさんは、可愛い孫にそんな苦労はさせられないと、孫が小学校に入学するたびに1人1,500万円の教育資金一括贈与をしてきました。1人の孫に贈与すれば、別の孫にしない訳にはいきません。Jさんには6人のお孫さんがいるので、贈与額は合計9,000万円になりました。

 

それでも、Jさん夫妻は気に留めませんでした。一流企業の役員を務めてきたJさんには、住宅ローンを完済しても充分有り余る退職金があったからです。それに、高齢になると日々の支出額もたいしたことはありません。コロナ禍で旅行や外食費に使う機会もなくなりました。

 

今の楽しみは、目に入れても痛くない孫の成長と将来だけ。そう思っていた矢先、Jさん夫妻を青ざめさせるニュースが飛び込んできました。令和元(2019)年、金融庁の市場調査ワーキンググループによる報告書が世間を騒がせた、あの「老後2,000万円問題」です。

 

「老後2,000万円問題」とは、簡単にいうと、夫65歳以上・妻60歳以上の夫婦のみ無職世帯が月々約5万5,000円の赤字になるという試算です。社会保険料その他の平均的実収入から、生活費や保健医療費等の平均的実支出を差し引いた計算によります。長寿化社会にあって、あと夫婦が30年生きるとすると、単純計算で1,980万円の累積赤字になります。

 

次々と6人のお孫さんに教育資金を一括贈与してきたJさん夫妻。不動産資産を除くと、預貯金等の現金は2,000万円をすでに切っていました。

 

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