昇給するためには、どうすればよいのか? 実は、給与は「等級や職位=クラス」によっておおよそ決まっています。クラスとは、簡単にいうと「補助・育成クラス(新人)、自己完遂クラス(メンバー)、チーフ、課長クラス、部長クラス」といった社内におけるポジション。各クラスの「年収基準」を知り、求められる「評価基準」を満たすことこそが、年収アップの近道です。※本連載は、西尾太氏の著書『アフターコロナの年収基準』(アルファポリス)より一部を抜粋・再編集したものです。

成果主義の時代、年収アップは至難の業

従来の給与制度では、若年層においては大きな問題や個別の事故(勤怠異常など)がない限り、ほぼ一律に昇給しました。ここではあまり大きな差がつきませんでした。

 

その後、チーフやプロジェクトリーダー、主任などに昇進すると、誰が先に課長になるのかなどで差がつきました。ただし基本的には早いか遅いかの問題なので、一定の層まではほぼ一律に昇給しました。課長以降になると、トーナメント型になり、はじめて選抜が行われます。部長になれない課長層も出てきます。役員以降も同様です。

 

このような漠然とした昇進イメージは、多くの人が認識していると思いますが、何をすれば、どれくらいの年収になるのかまでは知らない人がほとんどでしょう。

 

年功序列の給与制度で、勤続年数や年齢などによって誰もが一律に昇給・昇進していた時代なら、それでもよかったかもしれません。

 

しかし今後は成果主義が強まり、役割によって年収が決まることも予想されます。それぞれのクラスごとに「会社が求めていること」を理解し、そのスキルを獲得しなければ、減給、降格、あるいは退職勧奨といった事態が起きないとも限りません。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

各クラスで求められるコンピテンシー(評価基準)は、活躍する人が特徴的に持つ行動や考え方です。これらを知ることで、今の自分に求められていること、足りないこと、次の課題が見えてきます。

 

年収アップに必要なのは、現在の自分を客観的に理解することです。自分の年収が高かった・低かったと一喜一憂するだけでなく、今後の働き方の参考にしてください。

 

そして年収を上げていくためには、越えなくてはいけない「壁」のようなものがいくつかあります。こうしたポイントについて理解しておくことが、キャリアビジョン・キャリアプランを考えるうえで非常に重要です。

 

会社におけるポジションや個別のコンピテンシーとはまた別に、世の中全体を俯瞰した観点から「年収基準」の重要なポイントを見てみましょう。

「誰がやっても同じ結果の仕事」は年収360万円が限度

一般的な年収基準では、補助・育成クラス(新人)や自己完遂クラス(メンバー)の年収は250万〜360万円となっています。このレベルで求められるのは、まずは「社会人に求められる基本」であり、働くなら最低限備えていなければならないことです。

 

メンバーと協調する、感謝し、お礼を言う、ルールや時間を守る。これらの基本的なことができなければ、年収300万を得ることは難しく、年収200万、場合によってはもっと少なくなることもあり得ます。

 

仕事の内容としては、どのような業種や職種であっても「誰がやっても同じ結果」を出すことが求められます。

 

たとえば、コンビニ店員や工場スタッフのような仕事です。コンビニでは商品を販売し代金をいただくこと、工場では決められた指示通りに製品をつくることが必要とされ、「誰がやっても同じ結果」が出ることが重視されます。

 

こうした業務は、アルバイト、パート、派遣スタッフといった非正規雇用のケースが多く、個々のパーソナリティよりも「誰がやっても同じ結果が出る仕事」を確実に、効率よく指示通りに行うことが求められます。

 

たとえ正社員であっても「誰がやっても同じ結果が出る仕事」を続けているだけでは、年収はそれほど上がりません。年収400万以上を目指すなら、チーフクラスのコンピテンシーを獲得し、次の段階に進むことが必要となります。

年収400万円以上には「周囲を巻き込む力」が必要

年収360万以上で求められるのは、周囲を巻き込む力です。自分ひとりで仕事が完遂できるだけでなく、後輩やチームメンバーを指導するなど、チームのPDCAサイクル(計画⇒実行⇒評価⇒改善)を回すことが求められます。

 

コンビニでいえば店舗マネージャー、工場でいえば主任ということになるでしょう。営業などのひとりで行う仕事であっても、顧客や社内の関連部署などを巻き込み、より大きな成果を出すことが求められます。

 

周囲を巻き込み、大きな影響力を発揮できるようになれば、年収500万以上も望めます。ただし「優秀なプレイヤー」のままでは、年収は400万〜500万。それ以上の年収を得ようと思うなら、「マネジメント」ができることが必要となってきます。

マネジメントができれば「年収500万円以上」の人材

年収500万以上は、課長クラスです。小単位の組織を率いる、いわゆる管理職ということになります。マネジメントとは「経営資源を有効に活用し最大の成果をあげること」。経営資源とは「人・モノ・カネ・時間・情報」です。これらをムダなく活用し、最短距離で目標を達成することが求められます。

 

課長クラス以上の管理職は、タスクマネジメントとヒューマンマネジメントの2つの軸で評価されます。

 

タスクマネジメントでは、個人のPDCAから組織のPDCAを回すことに職務が移行し、段取りを組み、ミスなく実行し、品質をチェックし、納期を守り、よりよく改善し、成果をあげる。これを組織単位で行い、その責任を負うことになります。

 

ヒューマンマネジメントでは、部下やメンバーの「育成」が求められます。育成とは、メンバーの3年後、5年後のキャリアビジョンやライフビジョンを把握し、それについてメンバー一人ひとりと話し合い、各々の課題を明確にし、能力開発を支援することです。このようにして組織の中で大きな影響力を発揮していくと、その成果やマネジメントの責任を負うメンバーの人数などによって年収が上がっていきます。

 

マネジメント範囲の大きさ、チームで成果を安定的に出していくことによって、課長クラスなら500万〜600万以上の年収レベルが見えてきます。

 

 

西尾 太

人事コンサルタント

 

 

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