チームによるエラー対策3つの基本
医療は、とくにチームで対処せざるを得ないというシステム上の構造を持っています。
医療は仕事の中心は医師である場合が多いのですが、医師1人で情報収集はできません。主治医が担当患者を24時間ずっと観察することは不可能です。また、「医師は直接患者を処理できない」ことが多いのです。
とくに、内科の医師は処方箋を書き、それを薬剤師が調合し、さらに看護師が与薬したり、あるいは患者自身が服用したりすることになります。医師の指示を正しく実行してもらわなければなりません。
また、医療はリソース、つまり、人、モノ、資金がまったく足りないという現実があります。したがって、効率よく仕事をしなければ、忙しくなり疲弊してしまいます。
そこで、合理的にチームのパフォーマンスを向上させなければなりません。チームによるエラー対策の基本として重要な点をあげておきます。
【1】まず、あいさつ
まず、仕事を一緒にやるのですから、普通に挨拶をしてください。これは社会常識です。朝、職場に来たらまず普通に「おはようございます」と元気に言ってください。たったこれだけで、よい人間関係を構築する第一歩を踏み出したことになります。
【2】リーダーを決め、指揮命令系統を一本化
ある病院の精神科病棟で、入院中の患者がパンを口いっぱいに押し込んでしまい、呼吸困難となるという緊急事態が発生しました。「コードブルー」が院内に流れ、数人の医師が現場に急行しました。しかし、それぞれの医師がバラバラに看護師に指示をしたため処置が混乱し、対応が遅れてしまいました。幸い患者の命に別状はありませんでした。
指揮命令系統は一本化されなければなりません。これはチームの大原則です。フランス革命の際、パリ革命政府はイタリア戦線の司令官だったナポレオンの人気を嫉んで、2人制指揮体制を敷きました。そしてケラーマン将軍を派遣しましたが、ナポレオンはケラーマンを追い返し「2人の良将より1人の愚将」という名セリフをつぶやきました。
優秀な指揮官2人よりも、平凡な指揮官1人の部隊の方が強いということが歴史的に示されています。これはチームでの仕事の本質を表していると考えられます。
誰か1人をリーダーにすべきであり、これは日常の医療でも同様です。たとえば、患者をベッドから移動させるときも「誰かがなんとなく」ではなく、まずリーダーを決めてから行います。このときのリーダーは、移乗や体位調整前に、患者につながっているものの確認指示を出すなどの、安全の確認が必要です。移乗時には号令をかけ、移乗の後の安全確認を行いましょう。
【3】情報収集
「どんなに優秀な人間も、正しい情報がなければ、正しい判断はできない」、これはどのような場合にも普遍的に言えることで、情報収集はリーダーの仕事です。
一般に部下は、悪い情報を上司に報告することを嫌がったり躊躇したりします。なぜなら上司がいい顔をしないし、場合によってはしかられる場合もあるからです。
しかし、たとえ悪くても重要な情報を報告されなければ、正しい判断はできません。ということは、どれだけ悪い情報であっても、報告してくれたら感謝するくらいのことが必要なのです。
河野 龍太郎
株式会社安全推進研究所 代表取締役所長
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