庄司進氏は著書『補助金の倫理と論理』のなかで補助金をめぐる諸問題について語っています。当記事では、東日本大震災の復旧のために創設された補助金「グループ施設等復旧整備補助金」(通称:グループ補助金)について紹介します。

「補助金で成長してはいけない」がんじがらめの歪さ

グループ補助金の特徴について論じてみたい。それは、グループ補助金が災害からの復旧資金である、ということだ。

 

「そんなことは当たり前だろう。言うまでもないことだ」と思われるだろうが、実はこの「復旧」が大問題になったのだ。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

グループ補助金は、東日本大震災による津波で流出、損壊した施設、設備の復旧資金であるが、この「復旧」とは「震災前の状態に戻す」ということなのだ。

 

例えば、震災前に木造であった店舗を建て替える際に、今度は災害に耐えられるよう鉄筋コンクリートにするというのは認められず、また木造にしなければならない。建築面積が増えることも認められない。もちろん、鉄筋コンクリートにして従前よりも広い建物を再建することはできるが、「その場合は補助金は出ません。自己資金でやってください」というわけだ。

 

ある企業が、明治時代につくられたという石造りの貯蔵庫を震災前まで使用していた。それが津波で流失し、グループ補助金で復旧することが認められた。

 

「復旧」は厳格に運用されているので当然、震災前の構造、すなわち石で貯蔵庫を再建しなければならない。ところが、複数の建設会社に問い合わせてみたが、材料の入手も技術的にも元通りにするのはかなり難しいと言われ、石造りで再建すると膨大な費用がかかることがわかった。

 

そこでやむをえず、コンクリートブロックで再建することが承認された。これは例外中の例外で、施設の場合はグレードアップかどうかの判断に迷うケースはほとんどない。

 

「グレードアップ」という場合は普通は質的なもの、例えば性能の向上などを指すが、グループ補助金では量的なものも、例えば施設の建築面積が従前の面積を上回った場合などもグレードアップと呼んでいるようだ。

 

グレードアップが問題になるのは、施設よりも設備である。津波で流出してしまったトラックを復旧するケースについて考えてみよう。

 

流出したトラックは3トン車だったが、今度は補助金で5トン車を購入したい。これは明らかにグレードアップであるから不可。これはわかりやすい。

 

では、流出した10トントラック1台にかえて5トントラック2台にするというのはどうか。購入価格はどちらも同じとする。これも認められない。費用は同じであっても震災前は1台だったのが2台になることは認められないのだ。

 

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本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『補助金の倫理と論理』より一部を抜粋したものです。最新の税制・法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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